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さむいほらあな

 

きみがすきなんだ。きみがすきだからきみを奪った。

ここは寒いほらあな。寒いけれど、きみとぼくとふたりしかいない。

きょうからきみはぼくのお姫様だよ

 

どうして

どうして そんな顔するの

そんないやな顔するの

ぼくがいやなの

 

ぼくはずっときみを見ていたのに

きみが好きだからがんばったのに

きみが手に入るならなんだってできるから

ぼく頑張ったのに

そんな顔しないで

 

わかったよ なにもしないよ

なにもしない

そばにいてくれるだけでいいんだ

きみがもしずっとぼくと一緒にいてくれれば

ぼくはとっても嬉しいよ

 

ぼくがいぬだからなの?

人間だったらすきになってくれたの?

でも

ぼくほどきみを愛するいきものは他にいないよ

誰にもまけないよ

きみをおもうきもちは誰にもまけない

ぼくを思ってくれなくてもいいんだ

思ってくれなくてもいいから ずっとそばにいて

ずっとぼくのお姫様でいてよ

きみがすきなんだ


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滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」。

南総里見八犬伝には犬とお姫様が出てきます。

八房(やつふさ)と伏姫(ふせひめ)という名前なのですが。

伏姫と八房が一緒に暮らしたとされる洞窟(伏姫籠穴)を背景に、 八房→伏姫 の気持ちを表現してみました。

犬はきっとピュアですよね。

 

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背景を少し説明します。

千葉の南の方で、争いがありました。

伏姫のお父さん側の方が劣勢で、今にも城は落城寸前でした。

伏姫のお父さんは、八房に、

「もし、敵の大将の首を取ってきたら、褒美に伏姫をおまえの嫁にしてやる」

と言いました。

八房はお城のてっぺんから飛び降り、颯爽と敵の大将がいるところに向かって行きました。

そして見事、敵の大将の首を取ってきたのです。

 

敵の大将を失った敵勢は大崩れ。

折角勝っていたのに、負けてしまいました。

 

伏姫の父親は約束を守らず、

「畜生風情に大事な娘をやれるか!」

と、物欲しげな八房に辛くあたりました。

 

怒った八房は伏姫を背中に乗せ、

遠くの山にこもりました。

 

八房と伏姫は心を通わせ、精神的な契りを交わしたのちに伏姫は身ごもりました。

お腹の中の魂たちは、

伏姫がずっと首から下げていた数珠に宿ってゆきました。

 

伏姫を助けに、伏姫の父親の軍勢が八房を撃ち殺そうとするのを伏姫が身代わりになり、

その瞬間に、伏姫の首から下げていた数珠が飛び散りました。

 

全国に飛び散った、八房と伏姫の、八犬士たちの戦いがはじまります。



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