小さな世界 > 第4章「global」
私室・3
カリカリッ
「これなんか良く出来てンじゃねーか」
妃羽のベッドの上でユウがスケッチブックの絵を引っ掻いた。
妃羽「・・・」
アポイントを取り、離れた部屋に行きふたりで話した。
威俐様と。
層、という変な世界観。
音楽・・・
せっせと庭の世話をする妃羽。
毎日毎日そればかりだ。
庭師「よっ、そこら辺でひと休みですよ。脚痛くなっちまいますよ」
妃羽は「あ、はい」と答えるのだが、休まずに庭の手入れをしていた。
心の中の整理されていない部分を整理整頓しているかの如く、
丁寧に仕事をしていた。
妃羽さん。
庭師が声を掛けた。
妃羽が振り向く。
司書の仕事が好きとか
庭の世話が好きとか
「秩序が、ものごとが整頓されているのがお好きなんですのう」
ニコッ
優しい笑顔をする庭師。
「ですがな、整いすぎるのも、、。少しだらしない部分やらダメな部分やら
あったって美しいものです」
眩しい光が妃羽を捉え、妃羽が目を細めた。
「バランスがあってこそ、世界はあり。美がある
失礼。変な話をしとうなりましてな」
背を向け、庭師は遠くに行ってしまった。
?
「(どういう、意味なんだろう)」
訳の分からない妃羽。
司書・・・
「(早く、仕事戻りたいな。色々忘れそう)」
ここはアメリカ、ボストン。
司書の仕事を探すにはまず中国、上海に帰国しなければどうにもならない。
ライチー飲料の出荷完了が夏のため、数ヶ月待たなければならない状況だ。
本が好きになった理由は、並べるのが好きだったからだ。
色順に並べたり、高さ順に並べたり。
『(この世界が一番上でー、この世界が真ん中なの)』
叔母『何それー。この世界も『本』だと思ってるのねこの子は(汗)』
そんな叔母も妃羽が20歳になる少し前に亡くなってしまった。
威俐私室、3。
・・・
アポイントメントを取ればいいってものじゃないぞ
きつい口調の威俐。
ソファーにそっと座り、話す妃羽。
手元のスケッチブックを少し持ち上げて言った。
「こ、この前この絵をお見せ出来なくて。それが何か心残りで」
威俐「それで?」
意地悪く笑う威俐。
!
下を向き恥ずかしさでどうにかなってしまいそうな妃羽。
本当はただ、会いたいだけであった。
「見せて」
軽く右手を出す威俐。
威俐のデスクに妃羽がスケッチブックを遠慮深く置いた。
威俐「稚拙だな」
さらりと言う彼。
まー、そうよね・・・ と小さく思う妃羽。
?
何だかとても優しい顔になっている威俐に気付く妃羽。
・・・
パサッ
少しして。
「話にならんな」
冷たく言い放つ威俐。
そ!
「そうですよね!分かってます。
・・・あの済みませんでした」
妃羽は分かっている結果が出て、すぐに答えた。
(会いたかっただけだから)
<10分後>
3人の人間がやってきた。
執事、正樹 正
副執事
召し使い長
絵を見る3人。
落ち着き無くふむふむ、と見る召し使い長と
正のように落ち着いている副執事。
召し使い長「どれもいい!・・・けど最後かな」
汗をかく副執事。
「どれもいいので決めかねます」とつまらないことを言った。
・・・
う~む
「(どれを選んでも結局は妃羽さんの絵が採用される。
テキトウに選べばいいのだろうか)」
何かを知っている正は悩んだ。
威俐「正」
少しイラついたように言う威俐。
彼をライバル視しているらしい。
正は冷静だ。
「(急かされているが、どうすればいいのだろう)」
シャネルのエゴイスト・プラチナムの香りが漂う。
正の愛用の香水だ。
どれも決めかねます。
「妃羽さんが決めても宜しいのではないでしょうか」
意味不明なことを言う正。
本当は計算であることを誰も知らない。
用事が済んだので、迷惑にならないように急いで退室しようとする妃羽。
3人が下がったのを見計らい、「有難う御座いました」と丁寧にお礼を言って退室しようとした。
威俐「待て」
え?
振り向く妃羽。