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小さな世界 > 第5章「知られざる」

勝ち組

とてもキレイな診療所。

あらやだ
アナタ緊張してない?

看護師が声を掛ける。


妃羽は黙っていた。

目の前の優しそうな医師は言った。
「抱え込まないで下さい。何かあったから来たのでしょ?」

んもう
「センセがいけないんじゃないの?
緊張させるような態度するから」

医師が看護師に振り返る。
「俺の何処が(汗)」

ビシッ!
と指をさして看護師(一応。オネエです)が言う。
「目力凄すぎ!相手を見すぎ!」



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妃羽はドロドロの底なし沼のようなところに妖怪?のようなものたちが
両足を引っ張って ズルーッ!と沈み込ませようとする

夢ばかり見ていた。

ハッと気付くと妖怪たちが無数に足をつかみ、下ーの方にある黒い沼に引きずり落とそうとして
ニタニタ笑っている。
それを、様々な人物が助け、、ハッと夢から覚めるのだ。

助ける人物は威俐だったり、暘谷だったり、・・・
その時によって違う。
ユウの場合もあればトマトの場合もある。


「(ほんと意味分かんない・・・)」
ひとごとなら面白いが、自分のことだと面白くもなんともない。


そうして、心療内科を訪ねたのだ。

「何で病院行かねーんだ!
世間体気にしてる場合かよ!」
と暘谷が言ったからである。

メンタルがあからさまに強そうな暘谷に相談した結果だ↑


世界が層で出来ているだとか自分が音楽で支配する能力があるとか
そういうのは全部「脳が見せている幻の世界」で
周りの人間たちはきっと存在していなくて、でも自分が勝手に「いる」と思っている。
そういうのではないのか?
・・・と思った。

あまりにも有り得ないからである。
世界がどうだとか、不可思議な能力だとかが・・・
ここは現実であって、ドラマや小説の世界ではない。
現実が分からなくなってしまったのか、と彼女は思った。
(でも普通はそう思うだろう)


そして今回の夢。

妃羽は常に疲れていた。


医師「・・・あなたはこの世界をつくりものだと思っている?」

ハッ
びっくりする妃羽。

妃羽「な、何で分かったんですか」
それに関することは何も言っていない。

医師「あなたには、『幸せすぎて怖い』というような雰囲気を感じる」

妃羽「・・・」

「通常人間は、幸せなら幸せだ、と嬉しいはず。
幸せすぎて怖い、は普通にある台詞ですが、あなたの場合、違う。

本気で怖がっている」

スッと横を向いてデスクを見る彼。

「世界を拒絶しているというものではなく・・・
『この世界は存在していないのではないか?』というところにまで行っている。

・・・不幸な人間はこんなこと思わない。幸福な人間だって思わないでしょう」


看護師「あらやだセンセ、怖がらせちゃうでしょ?
もっと言い方ってもんが
もう~~
ほんっと言葉が固いンだから」

・・・

看護師が妃羽の傍までやってきた。

「私なら言える?センセほら、ちょっと怖いでしょ?(大きなお世話)」

妃羽は何も言わない。

クルクルッ
医師はペンを回し、カルテを見ながら言った。

「悪夢の夢ですが。あなたは誰かからすがられてる助けてと言われている、と思ってい、、」

ガタッ
思わず妃羽は立ち上がった。
「そ、そうなんです」

やっと口を開いた妃羽。


助けて助けて、あなたなら助けられる

そういう物凄い『強欲の念』が伝わってくると。


ハッハッハ
医師は笑った。

「いっるんですよね~ 本当に。トロール(妖怪)ってやつですよ。
想像上のものじゃない。
そいつらにね、頼られてるんですよ
優しいから あ、悪い意味で、ですよ(苦笑)」

トロール?と思っていると。

メモ帳にムーミンを描いて妃羽に見せた。
「上手いでしょ?練習したんですよね~
って違う(汗)
このこの、逆の存在とでも言いますか 例え悪いな~」


センセ、トロールはそこまで悪い存在じゃないですよ(汗)
ひどい。トロールは可愛いのに。
と看護師。


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医師「この世界が例え作りものでも、どうでもいい。だからなんです。ねっそう思いましょ。
夢の話ですが、あなたの『層』のお話、の『更に下の層』からの助けを求められてる、と
考えます

あくまで例えですよ。
そう思えばラクでしょ」


ずっと、その医師の言葉を反芻する妃羽・・・



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