小さな世界 > 第5章「知られざる」
通信不可
窓際から外を見る花宇、中身沙耶子。
封印されていたが、謎を解いてと「清子」にお願いされ
一時的に表に出ている状態だ。
しとしと。
くっらぁ~ やんなっちゃう
あ~やだやだ。娯楽とか無いのぉ?
早朝時。誰もいない部屋で外を見て沙耶子が言った。
『沙耶子さん、まぁまぁ。人が来たらアレだし』
花宇が頭の中で語り掛ける。
パリンッ!!
花宇『!』
・・・ことの始まりは、諭弦を呼び出すベルが自ら破裂したことから始まった。
数日前。
花宇『秘密管理人を教えてくれるはずの彩海さんが来ない・・・(汗)』
長い時間を経ている設定になっているが
この世界に来たばかりなのだ。
困り果てた花宇だったが、
意味があるのだろうといたずらに時を過ごしていた。
そのうち、諭弦のベルを思い出し、お昼休みにそっと鳴らしてみたのだが。
全く反応せず。
花宇「(やはり意味があるのかな)」と思っていた彼女だったのだが、
夜にまたベルを鳴らそうとした途端に
パリンッ!!
という訳である。
こんなことだろうと思った~。
ため息をつく沙耶子。
普段は封印しているが、緊急事態なので「沙耶子」の封印を
解いたという訳である。
(封印、と言っても大袈裟なものではない)
しとしと雨を見ながら無言の沙耶子。
「G層は一番下なの。自分より下がいないの
だからー『自分より下を作りたい』って欲が激しいのね」
花宇『は、はぁ・・・』頭の中の花宇が反応する。
窓際にドカッと腰掛ける沙耶子。
「自信ないから争いごとして『下』を作ったり、
恋愛して自信を埋めようとしたり。
それで人口がどんどん増えるのよねー」
しとしと.....しとしと.....
沙耶子「G層はもう、混沌の坩堝(るつぼ)になってるから・・・
主でも、もう制御不可能なんじゃない?
だからA層の人たちも来れないとか♪」
花宇『そ、そんなっ!』
カチャッ
誰も来ていない召し使いの休憩室。
お茶の準備を済ませ、音楽を掛ける。
お香を焚く。
ポケットに入っていた壊れたベルを取り出す沙耶子。
「(きっと力がちゃんと届かなくて壊れちゃったのね。
ここ(G層)には容易には来れなくなってる・・・)」
花を探しに庭に出る沙耶子。
花瓶にさす用の花だ。
「A層の人たち、多分もう来れないだろうねー
もちろん他の層も♪」
のんきに言う沙耶子。
『え、えぇ~っ』と花宇。
・・・何らかの存在がG層の質を悪くして、それで変なことが起こってるみたいね。
険しい顔になる沙耶子。
「・・・」
しとしと。
花宇「(シュンユーさんも侵入不可だったA層入り口からA層に入って、
それからA層からずっと・・・下に行っていって、、)」
シーツ交換をしながら今までのことを思い出す。
主の意思を感じて下さいって諭弦さんは言っていた。
花宇「(恐らく『妃羽』さんに何らかの魔法を掛ける・・・)」
あの巨大な磁力で分かったことがある。
この世界の主人公、そして創造主。
・・・
「(目的が同じ、ってことよね)」
『約束!わしを幸せにするんだ!』
(約束!)
ふふっ
「(これも運命ね)」
鼻歌を歌うのんきな召し使いひとり。
「あなたー、これもういいの?」
「これ3つお願いー」
わたわた。
朝の慌しい声が聞こえてくる。
おっとっと。
「(庭を掃除しなきゃ 後また夜に沙耶子さんと話しよ)」
朝日が眩しい。
とても天気が良くなりそうな雰囲気と、良い空気。
ザッザッザッ..... ザッザッ.....
いつのもの場所を掃く。
「(秘密管理人て誰なんだろう。
妃羽さん、なのかな)」
・・・
ザッカザッカ.....
その日は、とても快晴になった。