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小さな世界 > 第5章「知られざる」

調和

そうだよ、と寝言を言う威俐に固まる妃羽。

が。

目が回った後、気付くと彼の頬に自分の頬をくっつけていた。

あっ、と身を起こしたが、数秒経って威俐は起きた。
いつ何時、危険が襲ってきても対応出来るように、寝起きが良いようにしているから、
と思われる。

威俐「今・・・」
眠そうに彼は軽く目を押さえた。


ぎうっと抱きつく妃羽。

し~ん

威俐「(妃羽?)」


寝起きで何がなんだか分からない威俐。
今何時なのかが気になる彼。


枕元の時計を取って時間を見た。

4:38

はぁっとため息を心の中でつく威俐。

何故か胸に妃羽が抱きついている。

彼女を抱き上げようとした時
「(バグか・・・物質転換の)」と気付く彼。


威俐「どうやらバグだか何だかで私たちは意思を曲げられているらしい」

しーん・・・とした空間。
何か不思議なものがふよふよしてふたりをうかがっていそうな感じがした。

この力と、戦おう。

ガサッ
妃羽が顔を上げる。

切ない顔をする威俐。
「きっと運命だよ・・・」


私はすっかり『精神主義』になってるな。
力に感謝してしまい、同時に恐ろしく感じる彼。

・・・
威俐から離れる妃羽。

「そう、、ですよね。何か変な力が。
一体どんな存在が」



・・・
あっ
暘谷に言われたことを思い出す妃羽。

妃羽「ち、力関係なく、「もの」じゃなく「ひと」として
見て下さって、いるんですよね」


「(あれ。そういえばそうだ
あれ・・・)」

意味もなく手話のように空中で両手を色々と動かす妃羽。

「ひ、「ひと」として見て下さっているのなら、『力』は関係ないのではないでしょうか。
「もの」として、力に従うはずです。
恐らくですが・・・」


威俐は優しい顔になった。
「やはりね・・・」
彼にしてはくだけた?言い方である。


妃羽は初めそっと、しかし我慢出来ずぎゅーっと威俐を抱きしめてしまった。


威俐「(何で昔?にコレをしてくれなかったんだ 仕方無いにしても)」
唖然とする彼。

早朝の、飛行機の音が響く。
ゴォォォン.....

みな、寝ているのだろう。


険しい顔をして、何も言わない威俐。



くわんくわんする彼女。
何もないはずなのに、『森林』の音楽が流れているような気がする。



フレーバー茶を飲む妃羽とコーヒー(起きちゃうよ)を飲む威俐。

妃羽「・・・今まで、「言葉」が好きでした。でも
「言葉」では、伝えられないものも、ありますね」
噛みしめるように言う彼女。


言葉は~心を越えない

日本の90年代の歌を歌う威俐。
「日本の、『SAY YES』だったかな。CHAGE and ASKA、っていう歌手の」

コーヒーの湯気が香りと共に、その空間を包む。

威俐「言葉も心も両方大切だ」

・・・
精神と肉体が同じくらい大切なように。



『業火』が流れる。もちろん妃羽の気のせいだ。


『山岳』も、『財宝』も・・・

『河川』が流れ出した時、威俐が「音楽?」と聞いた。

はいっ
久し振りの、爽やかな妃羽の笑顔。


おいで・・・
妃羽を引き寄せる威俐。



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