小さな世界 > 第5章「知られざる」
謎の花のような
その日はとても暗くて、雨が降っていた。
湿っぽく、空全体が風邪をひいているようだった。
空を見上げながら花宇は思った。
花宇「(この空の先にA層があるのかな
でもそうよね
C層も(私が元いた世界も)あるのね)」
諭弦『あの方の意思を感じ、そして最終的に「シュンユーさん」を助けて下さい・・・』
花宇「・・・」
思い出す度に暗くなる言葉。
専用の掃除機で床を掃除する花宇。
苦手なので注意深く掃除をする。
花宇「(そうやると効率悪くなるのよね)」
ふと、花瓶の花に目が行った。
花宇「(すごい綺麗。誰がやったんだろ)」
・・・
・・・
何となく、『造られた「花宇」という人間』にも思えたし、『主』のようにも見えた。
世界、、7層の世界にも見えた。
(A~G層の)
ウィーン・・・
ヴィーンンンッ!
ウィーン
汗をかきながらあちこちを駆け回る花宇。
・・・
何となく先程の花を見る。
・・・
「(何て。美しいのだろう
私の世界はこんなのあった・・・?)」
G層の様々な記憶(植えつけられた)を思い出す。
たくさんの色があって。
悲しみ、痛み、喜び、怒り、愛・・・
たくさんある
たくさんあるけど
全然見苦しくなくて
完璧な調和を保ってるよ
「(G層が一番、綺麗だよ)」
ああいう7層全部を表すような
美しいG層
・・・
『約束!わしを幸せにするんだ!』
「(ここで、絶対にそうするから。それまで
死なないでね)」
後半少し笑いそうになった花宇。
シーツ交換が終わり、シャンデリアの掃除に行く花宇。
1回落ちて、少しトラウマになっているので気を引き締めている彼女。
「(私決めた!魔法、シュンユーさんと竹流さんの・・・確かに助けるけど
妃羽さんの恋は「養殖」にはしない。
G層を現実にする魔法には全力で協力させてもらうけどっ)」
キュッキュッ
キュッ
シャンデリアを拭く花宇。
足元に気を付ける。
「(あーあと5部屋か。まだまだか)」
終わったら、ほこりが落ちた分、別の召し使い(ここでは愛衣)に
床とじゅうたんの掃除を頼まなければならない。
花宇「(あー早く帰って『神々の黄昏』の続きを読みたいなぁ)」←すごいファン
(※ちなみに「帰って」とはC層に帰って、の意である)
C層の清子は『神々の黄昏』というD層の物語を読んでいる。
D層の愛花たちは『Lily』というE、F層の物語を読んでいる。
E、F層の理々たちは『小さな世界』というG層の物語を読んでいる。
全部「国」が作っていることになっていて、誰が書いたとかそういうのは誰も気にしない。
しとしと.....
花宇「(G層にはたくさん素敵な物語がある
G層の下が出来るとしたら
すごくいっぱい良い層が出来るんだろうな)」
ビカッ!
ものすごい雷が落ちた。
何かを否定するかのように、そして脅すように・・・
雨は珍しくずっと深夜まで降っていた。