小さな世界 > 第6章「休息」
一瞬の
<寝室>
花宇がD層、という『違う世界』に行ってしまう、ということを聞いた妃羽。
世界がいくつかある、ということを聞いている彼女は、「一体何がどうなって」と
混乱したし、
何より花宇が去ってしまうことに衝撃を受けた。
花宇「もう『あなた』が幸せになった、からいいんです」
ニコッと笑う彼女は、誰か違う人を重ねて見て、言っているようだった。
現在―・・・
図書館から借りた本をうつ伏せで読みながら、花宇とのもうすぐの別れを考えて
ぼーっとしていた。
ごしごし目をこすり、電気を消しに行く妃羽。
(リモコンはいつも遠くに置いてある)
妃羽「(今日は悪夢あるかな
たまにはどんな姿しているのかまじまじ見てみよう、かな
・・・何かの図鑑に載っている存在かもしれない・・・とか)」
空気を踏むように、というアドバイスをラーチャから受けたが、
毎回毎回恐ろしくて強気に出れず。
必要以上に力が入り、次の日に大変な筋肉痛になっているのである。
そこは、灰色の洞窟。
前は黒かったが、今回は違う。
長身の黒衣の男性と、シュンユーがいる。
シュンユー「紹介するわ。私のパートナー。「竹流」
強い人よ」
竹流はどぎまぎしている。
人間の姿では初対面だからだろうか。
!
妃羽は息を飲んだ。
見事な銀髪。
「(美しい人・・・)」
声に出しそうになった妃羽。
しょぼーん、とした顔でシュンユーは言った。
「私、調子に乗ったわ」
先日の『悪夢から救うわ。任せてね』のことを言っているらしい。
洞窟から垂れるしずくで、ピトトトン、という音がずっと止まらない。
ええともしかして・・・
あの時の ウグイスさん?
妃羽が竹流に問い、
「あ、ああ。そうだよ。あれ?(シュンユーの方を向く)私ウグイスだったっけ」
と言う黒衣の男性。
確かに少しだけ、かすかだがエメラルドグリーンとブルーの色が入っている髪。
ウグイス髪?と思う妃羽・・・。
3人で何故か洞窟を歩いている。
先頭はもちろんシュンユーだ。
「私とたけちゃんならいくらでもどーにでもなると思ったのに」
少し残念そうにしているシュンユー。
「この夢の中なら入れるの
実際の『この世界』には入れないけど」
妃羽の夢の中には入れるのだが、G層には直接入れないとのことだ。
洞窟の先には光が見えるが、いくら歩いても光の場所までは行けない。
シュンユー「人類の希望が薄いってことよ
あなたの心(夢)がそれを現しているのね」
竹流がたしなめる。
「シュンちゃん!」
ジャリッと少し前に出て、「あの」と言う妃羽。
ジャッジャッジャッ
3人が同時に後ろを振り向いた。
とても凛々しく、オーラのある子供がやってきた。
竹流が嬉しそうな声を上げる。
「あれー?禅さんじゃないすか。あれ、どうして。あれ?」
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禅、と呼ばれる子供は壁に寄り掛かって腕を組んでいる。
竹流は胡坐、シュンユーは両脚を伸ばした格好、
妃羽は正座。
シュンユーは弱気な声を出す。
「主はなぁーに考えてんのぉ?」
竹流は言った。
「禅さんを簡単にここに送り込めるなんて。
そんなこと出来るならG層に簡単に、みんなを送り込んでくれてもいいのに
様子伺ってんのかなぁ~、いや・・・」
ピトトン ピーン!
洞窟の水滴が気になるのか「気になるなー どうにかならんかなー」と軽く言う竹流。
シュンユーは説明した。
G層が未生命に覆い尽くされ、悪バリアー?でF層より上にいる存在たちがG層に入れなくなった。
でも竹流だけはG層に行ける。
シュンユーはようやく妃羽の夢の中に入れるようになった。
「竹流さんが、特別なのは?」
当然聞く妃羽。
「何だっけ、8徳ってやつよ
主が人に求めるなんちゃらっていう」
あー、なるほど・・・
・・・
パッと目が覚める妃羽。
「(あれ?)」
・・・
ベッドから降り、またバサッとベッドに身を横たえる。
何かためになる事聞いたのに!
・・・忘れちゃった・・・!
チュンチュン.....
小鳥がのんきにさえずっていた。


