短編集Tanpenshu
時空を超えてBeyond time and space
- 第1話:ほっぺ
史 朧浪(しー ろんらん)。
中国のある組織、史家のひとり息子である。
御歳、25歳。
病魔に侵され、あと半年も持たないと言われていた。
彼は小さな島の別荘で、静かに暮らしていた。
長くて半年。最悪1ヶ月。
彼は海を眺め、残り少ない生(せい)、を静かに過ごしていた。
ちなみに史家にはたくさんの養子がいる。
朧浪「(俺が特にいなくても どうとでもなるだろう)」
ざざ~ん
いつもより潮の香りが強い気がする。
テケテケテケ
海の方に降りてみた。
・・・
岩の陰からにゅるっとした物体が出てる。
「(くらげ??細い・・・長い・・・?)」
普通はきも~いん、となるところだが、、何となく触ってみたいと思った。
気持ち悪くも何とも無い。
両腕で思いっきし ぐいっ! と引っ張った。
・・・
そこにいたのは素っ裸のぬるぬるした(全身にゼラチンが絡み付いてる感じの)女性だった。
すごく驚いた顔した女性は
あ、、
愛人(アイレン)!と言って朧浪に抱き付いた。
その勢いがあまりにもすごく
朧浪は尻もちをついてそのまま仰向けに倒れてしまった。
「愛人愛人愛人あいれ~~~ん」
女性はぶちゅ~~っと濃厚な口付けをしてあちこち(頬とか鼻とか)口付けしてきた。
ぎゃ~~~~!!
シンシアー!ミランダー!!アルバート!ブレントー!!
朧浪はメイドや執事たちの名前を呼びまくった。
が・・・
ちゅ~~~~~
・・・
頬に再度された口付けがあまりにも(略)で
「いや~まいっちゃうな~」な気持ちになり
「まぁこれもこれでいいよな~」なんて気持ちにもなり、
「何でもない!!何でもないから!本当に何でもないから!ね!!」
と、メイドたちがいる方に言っておいた。
そして女性はじっと朧浪を見て「・・・溟渤(みんお)様」と言った。
テンションが急に落ちて、朧浪から離れ、
ぴゅるるん、と足を魚にしてしゅるるる、とカーディガンのようなものを出現させて羽織った。
朧浪「・・・人魚のかた、だったんですか」
あの世への旅路を間近に控えている人間である。
常識・非常識だとか、そういうものを超えた視点を持ったり、受け入れたり出来る境地に達しているのだろう。
その女性は「人魚というかくらげ女といいますか・・・」と言った。
朧浪「くらげ女・・・(想像している)」
女性は名前を聞いた。
朧浪「史 朧浪(しー ろんらん)。中国人(チャイニーズ)です。」
あ、じゃあ・・・
チャイニーズなら、、チャイナドレスですね。
そう言って立ち上がり、魔法みたいなもの自身に掛け、桃色の着物を装着した。
朧浪「(チャイナドレスって言って・・・汗。・・・あの民族衣装は・・・日本人(ジャパニーズ)・・・」
私は「洋香(ようこ)」といいます。宜しくお願いします。
ペコリ、と頭を下げる彼女。
「私は大和民族、、ジャパニーズです。ここ中国(チャイナ)だったんですね。てっきり台湾(タイワン)なのかと・・・」
朧浪「確かに台湾に近い島だから・・・」
朧浪さん、あなた毎日海を観てましたね。
女性は嬉しそうに言った。
朧浪「そうだね」
何故か、そこで全てを察する彼女。
ビユゥゥゥ・・・・
不安定な天気が続いており、
「風強いなぁ」と思う洋香。
洋香は言った。
大昔の憧れの人にそっくりだったと、そしてそれで破廉恥なことをしてしまったこと。
砂に文字を書くふたり。
洋香、で「ようこ」と読むのです。
ろんらんは 朧浪、、(スースースッと砂の上に書いている)
こう書くのですね
・・・
「コウ、って呼んで下さい」と洋香。
「ほっぺにチューして欲しい」
ぼそっと言う朧浪。
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