短編集Tanpenshu
時空を超えてBeyond time and space
- 第3話:縛
朧浪さん・・・
・・・
先程の言葉。
『正直、楽しいこともたくさんあったし、世の中には飢えた人々も山ほどいる。
俺は贅沢な暮らしが出来て満足だ。
もうこれ以上、望むことはない。
何も・・・』
・・・
後ろ姿を見送りながら、、
「これも運命なのかな・・・」
蚊の鳴くような声でつぶやき、、コウは去って行った。
リーン リーン リーン
まだ夏なのにな。晩夏だけど。・・・初秋になったのかな。
座りながらぼーっと、とある小さな洞窟から海の方を見るコウ。
「(海の中に入ってもいいんだけど、、)」
チラッ
大きな、史家の別荘。
あの中に朧浪がいる。
「(中身は違うけど、外側は溟渤(みんお)様そのものなのよね)」
溟渤とは海の神で、雲隠れる前にコウに様々な術を授けた存在だ。
コウにとって永遠の男性である。
ふぅ。
大きな樹でも探してそこの上から風を楽しんで、、それで海に潜るか、、
洞窟に入ってもいいかも。
そう思った後、彼女は・・・
中国組織の人間たちに囲まれるコウ。
そして現在―・・・
呑気にココナッツミルクジュースを飲んでいる朧浪。
彼とふたりきり。
コウは何故か落ち着いていた。
朧浪に聞くコウ。(もの凄く疲れている。話すのも億劫)
「命をどう思っているのですか。私にはあなたの考えが分からない」
朧浪「じゃもう帰っていいよ」
周りの立派な調度品を見て、何て場違いな人なんだろうと感じるコウ。
あの格好良かった面影はどこへやら。
すっかり簡単な姿かたちになっている朧浪。
・・・
半・不老不死になるために、コウと一緒になりたいという約束をしたが、
最後には口論の末、全てをポイ捨てした彼。
屋敷では、ビバルディの「春」が流れている。
たまに妖艶になる朧浪と、たまに変になる(姿かたちが)朧浪と・・・
「(万華鏡みたいだわ・・・ そんなにキレイじゃないか)」
何を言っていいのか分からないコウ。
諦めたいのだが、溟渤そっくりな彼の姿を見ていて、
ずっともじもじと優柔不断に迷う彼女だ。
赤烏龍茶、というペットボトルが横に並んでいる。
・・・
しかし、「KURO」と書かれていて
「AKA」じゃないのか?
と関係ないことにずーっと意識が取られる彼女。
万華鏡のような空間。
「(参ったよ)」
何をしても無駄だ、と黙る彼女。
(略)
でも、生きて欲しい。
生きて欲しい。
・・・
絶対・・・生きて欲しい。
コウは海に潜りたかったが、頑張って説得しようと決めた。
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