短編集Tanpenshu
まぼろしIllusion
- 第1話:約束
中学生は多感な時期である。
ふとした瞬間に異空間に入り込んでしまうことも・・あるかもしれない。
気付いたらめぐり会い、気付いたらすっかり無くなっている・・・
心惑わすサクラの時期は
なおさら、、
約束よ
霧の中に袖のない白い服着ていた少女が 後ろを向いて消えていった。
「『約束よ』、、どういう意味だ」
ここは山の手中学校。
タケルと呼ばれる男子生徒は たまーに思い出すあの映像を思い浮かべながら考え込んでいた。
バシッ!
背中を思いっきし叩かれる。
「おっす!タケル。どしたの 物思いにふけっちゃってさ」
同じクラスの関 朋子(せきと もこ)である。
「あ、関さん・・・」
だからぁ!
「トモコでいいって。もー何度言っても聞かないんだから」
「と、とも、、まぁ今度で」
タケルは少し前に両親を事故で失った。
そして独身の叔父に引き取られた。
・・・そんな身の上があるせいか、クラス中みんなが「腫れ物」に触るような対応をしていた。
タケル!次 物理だよ!一緒行こ?
「ちょ、待って、、(汗)」
そんな中、空気読まずに話し掛けてくる女子生徒がいた。
トモコ、である。
・・・
ココは一体どこやら。
「だぁ~れも使ってないちっちゃな部屋があるの
やだ。誰かがいけないことしてるかもね
鉢合わせしちゃったらどーしよ」
てけてけ
昼食の時間にどこかの準備室に「いや、ひとりで食べ・・・」の言葉をさえぎり
腕をひっぱりタケルを連れて行くトモコ。
ガラガラ!
ほこりがあるわね、軽く掃除してっと。
・・・
・・・
「へ~え 未来の娘さんなんじゃないの?」
もぐっもぐもぐ
「・・・な、、の、、かなぁ?」
『約束よ』 ねぇ
未来のお嫁さん?
「・・・とも違う気がする」
タケルは面倒臭くなって誰にも話したことない「約束よ」の幻?をトモコに話したのだ。
ふぅん
「・・・何歳くらい?その女の子」
タケル「5歳くらいかな」
もっと下かも。
「タケルは?同じくらいなの?」
「・・・どう、、だったかな。良く分かんない」
夢が印象的だったとか?
「それがあまりに印象的でたまに思い出すとか・・・」
タケル「いやー、、あった気がする!夢ではない」
トモコ「へ~え。じゃあ何だろ?ちっちゃい頃約束したんじゃないの?
幼稚園の時とか」
タケル「全然 記憶にないんだよー」
トモコ「参ったわねー 前世の記憶ね。こうなってくると」
トモコは肩をすくめた。
約束ってさー
破るといけないものなのかな?
タケル「んー どうなんだろう」
トモコ「約束自体思い出せないとどうしようもないよね、でも」
タケル「でも、何かやらないといけない気がするんだよ」
トモコ「・・・でもそんなちーさい子に しかも結婚の約束じゃないって聞いたし。
どういうことなのかしら」
・・・
・・・
タケル「せ、、えっと。と、トモコさんはどうして俺に関わってくるの?」
ん?
タケル「慰めようとしてくれてるなら別に・・・」
トモコ「ほら~苗字が「関」でしょ。だから関わろうとすんじゃないのー」
タケル「そ、そうなんだ」
ばっと立ち上がるトモコ。
ポニーテルの髪がパサッと舞った。
「つーか いいって。遠慮しなくても。何でそう卑屈になるかなー」
「お、俺 卑屈?」
「卑屈よ!まードンドン来るずーずーしい男よりいいけどぉ」
(自分のこと完全に棚上げ)
くるっと振り向いて言った。
「私、オカルトとか大好きだから。調べてみるよ。
えっと、袖なしの、女の子、、」
「お、オカルト好きなんだ・・・汗
俺駄目だわ。怖いの苦手」
「超常現象の方よ~
ホラーじゃなくてね」
さ~、お昼終わりそうだから帰るわよ。
やはり腕を引っ張ってスタスタ行くトモコ。
「俺まだ全部食べてないん・・・」
パッ
奪い取り「んまー」
むしゃむしゃ食う。
「間接キスとか思ったら張り倒すから」
・・・
嫌がる余裕も避ける余裕もない、このズンズン振り。
タケルはなすがままだった。
・・・
下校時刻。
・・・
キョロキョロ
ミナー、一緒帰ろー
「あ、うん。ちょっと待ってね」
優しい笑顔が印象的な、神田美奈子。
トモコが急かし、ふたりは一緒に教室を出て行った。
「・・・」
自惚れる訳じゃないけど
「よっす!(バシッ!)一緒帰ろうぜい!」
・・・とかやられるんじゃないかと思ってたけど
「(ま、安心だな)」
寂しさとホッする心で複雑なタケル。
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