短編集Tanpenshu
まぼろしIllusion
- 第3話:そう
参ったな。
掛け布団を頭からかぶりながらトモコは静止していた。
「(も~二日も休んじゃったし。そろそろがっこ行かないとやばいよね)」
「(ミナも心配してるだろうし)」
関朋子。
山の手中学校のいち女生徒である。
席の近い「タケル」と皆から呼ばれている男子と仲が良い。(無理矢理ズイズイ行っている説もある)
そして上記の「ミナ」と呼ばれる親友もいる。
タケルと仲良く話していたら、
「約束よ、と言って霧の中に消えていった白い服の女の子の映像が忘れられない」
という話を聞いた。
オカルトが好きなトモコがその謎を解こうと約束し、
一昨日、『タケルはいつも関さんて呼ぶ。今日もどうせ呼ぶだろうからトモコって呼びなさいって言わないと』とミナと話してて、
言ってる途中で
「知っちゃいけないこと」を知ってしまい、(言ってる時に)
・・・こんなことになってしまった。
・・・
ミナには上手くだましておいた。
「(ストレスだわ。ひとりで抱え込むの
誰かにこの秘密を教えてスッキリしたい
でもその人を危険にさせることにもなる・・・)」
・・・
学校までの道のりは普通で
むしろ心地良かった。
「今までのことは全部夢だったんだよ。安心して」
と周囲の自然たちが言ってくれているようだった。
ガラガラ・・・
いつもは ガラガラッ!と乱暴に開けて、「おっす!みんなげんきぃ~?」
と言って
「おっす!おい関。なに髪型変えてンだよ!」
「おはよー関たん。今日随分早くない?」
「関さーんおっはよー!!」
そんな感じなのだが、
遠慮がちに開けて、トコトコ(いつもは「スタスタ!」)席に向かう。
あっ
ミナが駆け寄る。
「トモちゃん!良かった。私心配して・・・」
ふたりで適当に会話して、
そしてトモコは言った。
「私ね 色々あるかもしれないけど」
ミナ「?」
トモコ「でも、やるわ」
・・・
茜色の空。
口を開けて、、ぼーっと空を見てしまう。
下校の生徒たちを窓から眺める。
「(もー帰る時間。早いもんだね)」トモコは思う。
タケル「関さん」
ぎゃああ!
ものすごく鳥肌を立てて、超びびるトモコ。
やだっ!何びびって私。カッコ悪い、と思う余裕は1ミリもない。
・・・
目の前のタケル。
「(性格の悪い大人、人間たち・・・)」
その中でひときわ異彩を放っている「性格の良い人間」タケル。
だから私、タケルと仲良くなりたくて
ズイズイ行っちゃったのよ
だって
「(今時いないもの。こんな良い人)」
たまにいるよね。クラスに、、違うわ。
学年にひとり、、
「すごく性格の良い人」
タケルはまさにそれだったから
仲良くしたかったの。
何か森林浴してるみたいだったから。タケルと話してると。
・・・うつむいてしまう。
「帰らないの?」
タケルは言った。
「タケルは?タケルは帰らないの・・・」
タケルは無言だ。
あのさ
トモコは覚悟を決めた。
こっち、、き、き、来なさいよ、、ぅ!
タケルの手をひっぱり、あまり人が来ない階段のところに連れて行った。
「お、屋上だったら、、あたし、、、い、命、、、だから・・・」
タケルはニヤリ、、と嗤った(わらった)。
「そっか」
「やっと気付いたんだね」
トモコは冷静に返した。
くるっと振り返り、「そうよ 気付いたわ」 と凛として言った。
タケル「参ったな。誰もだましてたのにまさか君が気付くなんて」
ううぅううぅぅ じぬぅぅぅう
トモコは泣きそうだった。
どうしよう誰か通らないかな。
涙腺が緩んでくる。
タケル。
タケル「ん?」
トモコ「あたし、あなたのこと信じてたのに。信じてたのに
すごく良い人だから。だからあたし、、嬉しくて、、へ、変な人間ばっかだから。
あたしも含めて・・・」
タケル「良い人の振りするのは疲れたよ。小学校の頃は6年間完璧にだませたのに
まさかねぇ 中学校でつまずくなんて。
しかも頭良さそうな人間ならともかく 君みたいな普通の人間に。
しかも、、女如きにねぇ。クックックック」
あ・・・
そのまま後ずさり、、つまずく。
階段に、座る形になるトモコ。
ゆらり、、と近付いていくタケル・・・
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