短編集Tanpenshu
辛い担々麺Spicy dandan noodles
- 第4話:豚骨
重度のシスターコンプレックス、、の上の上を行って病名までついても全くおかしくない程、姉好きの弟、恭介。
彼は、、
姉以外に対しては普通だ。
普通というか普通以上とも言える。
落ち着いているし、勉強もスポーツも対人関係も何も問題はない。
姉に対してだけすごくおかしいのである。
そしてついに自分の本当の気持ちに気付いてしまった。
シスターコンプレックスではなくて、恋愛的に姉が好きなのだと。
LIKEではなくLOVEだ。
やばい方である。
それに対し、「良かった・・・」と意味不明なことを言ってへたり込む奈々。(姉)
変な意味じゃなかったのね。と言う。
「(変な意味だろう!)」思わず光速の早さでツッコむ恭介。
怯えられてるとか・・・何か知らないうちに変なことしちゃってそれでトラウマになってるとか・・・
「そういうの想像してたの」奈々は言う。
「そういうのじゃなくて良かった」
・・・安心しているようで良かったけど、、いいのかな・・・
「(今はともかく、後で気持ち悪がられないかな。・・・・・・気持ち悪がられるよな・・・)」
おろおろする恭介。
奈々は立ち上がり、「いいわよ、好きになっても。嫌われたり、、無視されたり、、避けられる。怯えられる・・・よりはいい」
「どうせね、姉だもの。飽きる日が来るでしょ」
気楽に言って 安心したように自分の部屋に去って行った。
恭介はずっとその場にたたずんでいた。
冷たくされたり、避けられたりされると思ったが、
次の日もその次の日も。
奈々はいつも通りであった。
ただ、恭介に対する笑顔が増えた。
今までだったら「(俺みたいな釣り合わない存在に笑顔なんて!!奈々が汚れる)」とか(略)なことを考えていた恭介だったが、
にこっとちい~~さくだが、、微笑み返せるようになった。
繁華街。
数年後、恭介が20歳になったあたり。
に時間は進む。
ボス次郎のことがあったからじゃなくて・・・
単純に奈々が魅力的だったからなんだよね。
ぼんやりと「やはりそうだよなぁ・・・ボス次郎関係ないよなぁ・・・」的なことを何となく考える。
きっかけは何だったのか、奈々のことを深く考えることがあって そういう結論に至った。
こういうのは普通、両親との関係が云々とか、、
恐らく良くあるのが、両親がいなくて兄弟で結託しなければいけない環境にいて、
その事で兄弟間の結びつきが深くなって、・・・そういう感情になってしまう(ならざるをえなくなる?)というものであろう。
が、恭介はそうではなかった。
特に両親との関係がどうこうあったとか、何か悪い環境があったからとか・・・
ぜ~んぜんないのだ。
「(多分、お姉さん好きなの?って聞かれたら ハイって言っちゃうくらい好きだなー)」
さすがにきもい。
えー?
奈々「だからね、そうした方がいいと思って」
恭介はきっと奈々がいるせいで結婚どころか恋愛も出来ないだろう。
プラス、奈々が結婚とかしたら面倒臭いことになるだろう。
ずっと飽きてないみたいだから。
「シスコンなのねー」
そう言って奈々は、お互いにずっと誰とも一緒にならずに『一緒に暮らそう提案』をしたのだ。
以前だったら「俺なんかが(もう略!)」と思っているところだった恭介。
うん!
ハンバーグを食べた子供のように嬉しそうな笑顔をした。
「参っちゃうわねー。まぁしょうがないか(・・・弟ってこんなものなのかしら?)」
苦笑する奈々。
ハッとする。
「お料理、いつも任せてばかりで御免ね。ちゃんと私作るから」
恭介は言った。
「じゃあ僕ハンバーグ!」
小さい頃の、まだ奈々に恐縮していない恭介の笑顔がそこにあった。
えー
「私ホットケーキが食べたいのに!」奈々が言う。
・・・
ふたりでキッチンに並ぶ。
分担してそれぞれ調理をしながら、
「ここひとり用だから、ふたりで暮らせるとこ見つけないとね」
と奈々は言った。
あっ
「辛い坦々麺、今度こそ作るね」恭介は言った。
うん
「ふたり分作ってね」
・・・
・・・
ふたりの関係そのものが、辛い坦々麺になってしまった。
恭介自体は根本が「崇拝」で土台が固められてしまっているので 奈々が危険な目に遭うことは100%ないであろう。
(皇后陛下に手を出すようなものである)
「もうお湯ラーメン駄目だからね!」と奈々。
「ハイ」と恭介。
今度こそ美味しい坦々麺が食べられそうである。
(了)
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