短編集Tanpenshu
悠久を織るWeaving eternity
- 第13話:バランス
新しいものばかり光速で追い掛ける悠悟
新しいものも古いものも尻軽く追い掛ける彩織。
現在は玄孫(やしゃご)がいるおじいちゃんおばあちゃんである。
で。
「バランス」についての話である。
(突然であるが)
例えば「森」。
あるひとつの木が極めて優れていても、
周りの木々がたいしたことなければ、その森は美しくない。
国。
ある国があって、
ある景色、、あるひとつの都市が素晴らしく整っていて素敵でも、
他の都市たちが荒んでいればその国は・・・「美しい国」と思われにくい。
・・・悠悟はバランスの塊であった。
ひとえに「母親」と「父親」が影響している。
理由は「からぁ」参照である。
そのため、、
内側もそうなのだが、
(略)、、であった。
素敵ぃ~、と近付く人間はいなく、
「怖い・・・」と恐れをなして皆は逃げて行った。
そういう業界の人間たちも、、
「観る人が怖がる・・・」と悠悟から逃げて行った。
みずがめ座の神話に出てくるガニメデスという羊飼いの少年はゼウスにさらわれたが、
この、、全知全能の神ですら「やめよ」と悠悟から逃げるだろう。
さて・・・
悠悟は「人間」だが母親が天使で父親が悪魔のため、一瞬だけ「天使悪魔」?のような つまり「力」を持つ時期があった。
赤ちゃんから1歳になるまで。である。
(1歳になった途端に消滅)
生まれたばかりの頃、大きなベビーベッドで寝かされた悠悟は隣で寝ていた彩織の顔に唾を掛けた。
(第一話参照)
皮膚に掛かったことにより、彩織の皮膚に変化が起こることになる。
いわずもがな。
悠悟と同じ境遇を辿る、、ことになる。
その中でも耐性のある人間はいるもので、そういう極少の人間を友人にして日々を過ごしていた。
「何かおかしいぞ」
悠悟の父親が気付いた。
悠悟が人から避けられまくっているのを見て、父親は異常を感じた。(遅い)
小学校1年時である。
(相当昔・・・)
そして同じく近所の幼馴染の女の子(彩織)もそういう状態になっているのに気付いた。
恵子「自然界に有っちゃいけない美しさ、なのね・・・」
悠悟「人から危害を加えられにくくなるから、かえっていいかも」
呑気な悠悟。
穏やかに過ごすことが出来ればそれでいい、と思っていた。
しょうがないわっ
ガタッ!と立ち上がって恵子(悠悟の母)が言った。
恵子「中和剤を作りましょう。貴人さん」
貴人は悠悟の父親だ。
元に戻す呪文は『ヘスティア』である。
かまどの女神の名前でねっ
人差し指をピッと出して笑顔で恵子が言った。
封印を「炉の火」で解いてくれるから。
恵子「それでいつでも戻れるから。だからもう安心してねっ」
貴人「俺たちは大丈夫なのに。俺たちが一緒になったからバランスが取れすぎたのだな」
くるっと恵子が振り向く。
美、っていうのは「欠点が少しあってこそ、なのね」
このこたちは
「欠点が無かったから困ってたのね♪」
父親が謝った。
貴人「とりあえず、これでおまえたちはごく普通の生活が送ることが出来るようになる。
特に彩織さんという女の子。迷惑を掛けたと謝っておいてくれ」
ふたりは「中和剤」なるものを飲み、悠悟は人間界に合わせた顔に、彩織は元々の顔になり、、事なきを得た。
そして、貴人と恵子は悠悟と彩織の知り合いの人間たちの「記憶」を変化させた。
「悠悟の顔」「彩織の顔」の記憶をすり替えたのである。
現在。
彩織「ヘスティア、たまに使ってたわね」
ん、そうだったか?
興味なさそうな悠悟。
彩織は言った。
「バランスがとれた状態って『生きてない』状態じゃない。
私たちは高みを目指すために、バランスがとれた状態になるために生きてるのよ。
最終地点にいるのは生きていないのと一緒だわ」
悠悟「それもそうだな」
悠悟はバランスが取れすぎていたために、最初から悟り切った人間になってしまったのかもしれない。
あっ
彩織が声を上げる。
ふたりは夜のベランダのデッキチェアに座っていたのだが・・・
彩織「さっき新月だったところが満月になってるわよ」
くるっ
悠悟を見たがタヌキ寝入りをしていた。
再度、満月を見る。
視覚中枢などをいじったのだろう。
満月に見えるように。
彩織「月のバランス、とはやるわね」
はははっ、と笑う彩織だった。
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