短編集Tanpenshu
悠久を織るWeaving eternity
- 第19話:悠
悠(ゆう)。
四季 悠悟(しき ゆうご)と
四季 彩織(しき あやり)の愛の結晶である。
(化学合成物とも言う)
母親の旧姓は「紫野」。
四季、に紫が混ざったとも言えよう。
その化学合成物が「悠」であった。
色とりどりな才覚。
彩織は、自分が生んだ子とは思えない、、
とポリポリお菓子を食べて映画を鑑賞するように悠を見ていた。
悠悟もしばしば、悠の「普通じゃないぶり」に感心した。
悠悟は「常に情報の最先端にいる」人間である。
対し彩織は「古いものも新しいものも、いずれはどっちも『古いもの』になるでしょ。
なら、両方可愛がらなきゃ」の人間だ。
悠悟は「からぁ」という話で「自分はニュートラル。ライトにもダークにもローにもカオスにも属さない」と言っていた。
「けど」
と彩織。
あの子は「ニュートラル、も、持っている」わね。
長い階段(お金持ちの家にあるようなぐる~んと曲がった長い階段)から悠を見つめる悠悟と彩織。
この豪邸は悠が築き上げたものだ。
ライト、ダーク、ロー、カオス、ニュートラル
全色コンプだな
息子を評価する悠悟。
現在。
歳を取り、子孫たちが大量~に出来た。
それはもう・・・
彩織「色とりどりね。
偏ってる子もいるけど。それぞれ才覚あるし」
うん。と悠悟。
(どうでもいい、と思っている)
四季がめぐり、たくさんの時を過ごし、
ふたりは一世紀以上長生きをしている。
それでふと、一番最初の子孫(子孫)「悠」を思い出したのだ。
懐かしいわ
目を細める彩織。
彩織「ムスコン(息子・コンプレックス)だったから、、随分真織さん(悠の奥さん)にやきもちを妬いたものだったわ・・・」
しょぼ~ん、、と何ヶ月も落ち込んでいた自分を思い出す。
悠悟「いい男だからな」
と悠悟。
そうよ!(少し涙声)、いい男っていうか、、いい男よ。何て言うか、、いい男なのよっ
悠の方はどちらかと言えば母親が苦手であったが・・・。
(悠は大人っぽく、彩織は子供っぽいので話が合わない。かみ合わない)
悠悟「俺はどうした」
え
悠悟に向き直る彩織。
常に一番でありたい男心。
呆けていない、何よりの証拠だ。
息子にライバル心を燃やす手の付けられない男の子、悠悟。
っていうか
「一族の家長じゃない、悠悟っ」
悠悟の父親である悪魔、貴人(たかひと)はすでに他界している。
(※悠悟は天使と悪魔のハーフ)
必然的に「四季一族」の家長は「悠悟」ということになる。
ん、そうだったか?
少しまんざらでもない悠悟。
四季一族の家長、「四季 悠悟」
彩織「一族全体を、悠悟が『指揮』するのよ。カッコいいじゃない、響き的に」
ここで調子に乗ったら負けだと、クールに「そうか」と言う悠悟。
しかし飲み物を取ってくる時に盛大にコケていた。
もう一世紀以上も付き合ってるけど、コケたところなんて一度も見たことないわね、、
と とても驚く彩織。
偶然にも、悠の話をしていたその日に悠が遊びに来た。
近くを通ったものだから。と。
悠悟と彩織の住み処はとても綺麗な海のすぐ傍にある。
観光系の施設がたくさんあるため、観光で来たのだろうかと両親。
実際は会社の支社に用事があり、その帰りに近くのここに寄ったのだと言う。
彩織「えっと『狛稲製薬』?・・・10個目の狛稲、かしら」
悠から渡されたパンフレットを読みながら訊く彩織。
ええ、と悠。
悠の会社は、表に「狛犬の像」、裏門には「お稲荷さんの像」が鎮座している。
という訳で「狛稲」なのだ。
読みは「こまいな」である。
悠「ほとんど悠馬(ゆうま)君にやってもらっていまして。
私はあまり知りません。情けないのですが」
悠馬とは悠の「曾孫」である。
悠悟と彩織にとっては「玄孫(やしゃご)」ということになる。
ひぃ祖父さんになっても相変わらず凜としている悠。
唯一勝てない相手である「悠悟」に戦いを挑む。
挑発オーラとでも言うか。
悠悟も同じで、ライバル心を持っている。
・・・
男同士って大変ね~と彩織は、悠のお土産の
ウィスキーチョコレートと、色んな犬種をお菓子にしたものをはぐはぐ食べていた。
確かに。
「(四季も、紫も、ライトもダークもローもカオスもニュートラルも持っている存在ね。
天使と悪魔のクォーターでもあるし。
でも。そんな貴方を「創った」のは私たちなのよ、悠・・・)」
あなたという存在を創った、私たちを・・・忘れちゃ、駄目よ。
悠・・・
悠悟、、手を、、
手をつかんで、、
そう思いながら、深く寝入る彩織。
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