短編集Tanpenshu
悠久を織るWeaving eternity
- 第2話:ネコ
悠悟と彩織が結婚して少し経って。
悠悟が単身赴任することになった。
「彩織は尻が軽いから浮気すんだろうなー」
と思いながら任地に向かう悠悟。
彩織は浮気したかったが、悠悟が全然嫉妬しないだろうことを思い、腹が立って一切浮気をしなかった。
(お互い変な夫婦)
彩織は悠悟のマンションにしばしば赴いた。
悠悟の部屋の中はいつも四次元で、彩織は疲れるばかりだった。
悠悟「来て」
たまに悠悟から電話が来る。
悠悟からは絶対に来ない。
彩織にいつも来させるのだ。
彩織「なんでそっちから来ないのよ!」
悠悟「だって面倒臭い」
ガックリ来る彩織なのだが、
悠悟「こっちの方が面白い」と勧めてくるのである。
『面白い』
四次元部屋のことである。
彩織「(今日はどんな世界が待っているのかしら?)」
その日、ドキドキしながら悠悟のマンションに向かった。
そこはリゾート地であった。
ざざーん ざざーん
海の波の音が美しい。
キレイな白いデッキでぼへ~っと悠悟がトロピカルジュースを飲んでいる。
彩織は横に座って 元々用意されていたトロピカルジュースをちゅ~っと飲んだ。
彩織「前は文豪の部屋だったのに・・・」
本がたくさん並んでいる明治~昭和初期ぐらいの文豪の書斎の部屋で、
悠悟がやはり和服の「いかにも文豪が着てそうな格好良い服」を着てぼ~っとライトノベルを読んでいた。
何故四次元なの?
元々こうなの?
と聞くのは野暮なので(そうか?)彩織は何も突っ込まなかった。
悠悟は不思議な力の持ち主なので、その力を今使っていると言える。
神様が不思議な力を授けたが、「貯金しておこう」と一切その力を使わなかったのだ。
それを今存分に使っている。
彩織「(前は、、中華料理店だったわね。その前は宇宙空間で・・・)」
彩織「あ、あの、、」
わ、私の誕生日にはっ タ、タヒチの海岸とかなんてっ、、
ん?
悠悟が振り向く。
「ハワイ→グアム→フィジー→タヒチ→モルディブ→パラオ→サイパン
の予定だったよ」
言葉も出ない彩織。
悠悟「精神力使うからまー土日は寝っ放し確定だな」
・・・
・・・
あっ
「そ、そうなんだ。あはっ。た、楽しみかも・・・」
嬉しさのあまり脚をバタバタさせる彩織。
ハッ
「(悠悟はせっかちなんだわ。・・・ゆっくり観光だとか、、そういうのは無理ね・・・)」
そうなのだ。
悠悟は発売日当日に買う派、さっさとクリアする派、
彩織は1年後中古が出た頃に買う派、じっくりクリアする派。
ふたりとも両極端なのだ。
諦めて浜辺を見ながら涼む彩織。
うとうとうと・・・
眠くなってパタリ、、とデッキに横になる。
悠悟「汚いよ。ちゃんとほら、ベッドで寝ないと」
ざざーん ざざーん
ざざーん
ハッ
夜中、彩織は起きた。
「(あ、こんな時間まで寝ちゃった・・・)」
屋外に出てみる。
キレイなハープの音がする。
え?
そのハープの音がするところに行ってみる。
悠悟がハープを奏でていた。
その周りではネコたちがドンドコドンドコと回りながら踊っていた。
彩織「わぁっ!ネコーッ!」
駆け寄る彩織。
ぼわんっ!
煙が立ち、ネコたちは消えた。
彩織「・・・忍者だったの?」
悠悟「まぁそうだね」
桃色ベッドで寝る彩織。
空色ベッドで寝る悠悟。
ざざ~ん
ざざ~ん
波の音を聴く。
彩織「ねぇ、たまにはこっちに来なよー。私のところの方。
ふつーはあなたの方から来るものでしょーが」
悠悟「また今度で」
彩織「ふざけないでよもう・・・
、、ん。そうだ」
ガバッとベッドから起き上がる。
「さっきのネコ忍者、一匹参上させてよ。
アレで許してあげるわ(今回の分は)」
・・・
ぼわんっ!
可愛らしいネコが出てきた。
きゃ~っ!
ネコにすりすりする彩織。
バチュンッ!!
ネコが破裂して煙になった・・・ような幻影。
悠悟「もともとまやかしだから」
彩織は思った。本当のネコは「悠悟」だと。
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