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ラブコメディLove comedy
- サンフラワー・前編
『You are my sunshine』
君は僕の太陽だ。
図書室に入ってすぐの連絡用掲示板に張ってあった紙に書いてあった文句。
この時代はこういう言葉は充分新鮮で。
「(良い言葉だな)」
と乃里(のり)は思った。
ずっとキョロキョロする乃里。
「(あっ)」
後ろ姿で、胡坐を?いて大量にある本を床にドサッ!ドサッ!と置きながら揃えている。
「(野古先輩)」
野古孝文(のこたかふみ)。
図書委員長で、話したことはない。
でも知っている人だ。
何度か図書室で見掛けている。
ドサッ!ドサッ!
手馴れた手付きで本を揃えている。
「折角揃えているのに毎回ごちゃごちゃにしやがって」とでも言わんばかりに結構大きな音を立てている。
「せ、先輩」
乃里は声を掛けた。
くるっと振り向く孝文。
「あ?」
やっていることの邪魔をされたのが気に食わなかったのか、すごい乱暴な声だ。
ピッキーン!!
「???」
幽霊でも見たかのようなすごい顔をする孝文。
あ、「あの!す、すみません!あの」
乃里は先程の反応を思い、素早く言おうとした。
乃里「せ、せかいb・・・」
孝文はスッと立ち上がり、無表情で
「やぁ、こんにちは。そうですね。いいですよね。本」
と意味不明なことを言った。
?
は、話さないと。と思い、
「せ、世界文学が置いてある場所を探しているのです。
どこにも見当たらなくて」
とペラペラ言う乃里。
(誰も読まないから遠いところや高いところにあると思われる)
孝文「そうかー。そうですよね。世界文学。文学は世界中にありますよ」
あ・・・
乃里「違います。あの、、世界文学の・・・」
あれですよ。
アンナ・カレーニナなんていいですよね。
あとね、ほら、源氏物語。
あとほら、初学記。
・・・
まるで菩薩様のように優しく語る孝文。
・・・
きっと
あまりに根詰めて本の整理をずっとやっていたから、、
「(疲れが頂点に達して・・・)」
青くなる乃里。
先輩!
グイッ!と孝文の腕を引っ張る乃里。
「保健室に、行きましょう!」
ベッドで寝ている孝文。
倫子(保健室の先生)「頭打って血ぃ出るなんて。下手したら脳に響くわよ。
大事にね。気を付けないと駄目よ」
乃里「わ、私がいけないのです。・・・腕、、、」
ガッシャーンッ!!
あの時の光景が蘇る。
『先輩、保健室に行きましょう!』
その後、孝文がドッシーンッ!と横の本棚にぶつかったのだ。
『先輩?大丈夫ですか?す、すみまs、、』
ああああああっ
倒れていた孝文はそのまま床に頭をゴチンッ!!とぶつけて
・・・
少し涙ぐむ乃里。
「(先輩が血だらけになって包帯を巻いて、、。
ただでさえ疲れているのに何てことを・・っ!
ばか!私のばか!!
先輩、、御免なさい)」
・・・
倫子「乃里さん、あなたもう帰りなさい」
えっ
乃里「で、でも。(こんな状態の先輩を置いて帰るなんて)」
倫子「・・・余計悪くなるわ。あなたがいると」
う"っ!
涙ぐんでいた涙が、たらーっと頬を伝う。
「ううっ、、御免なさい。そうですよね」
ブルブル震えながら、もう先輩に近付かないようにしよう、、と誓い帰ろうとする乃里。
「(先輩の傷が、すぐにでも治りますように、、)」
手を合わせて真剣に祈った。声にも出した。「頭の傷、御免なさい。治りますように。一刻も早く」
・・・
・・・
ふたりの目が合う。
孝文が起きたのだ。(目を開けた)
「せ、先輩!」
思わず駆け寄る乃里。
ガバッ!!
すっごく姿勢良く起き上がる孝文。
「御機嫌よう。いいところで会いましたね。いや~何ていうか
ん?ここは保健室?
保健室はいいですよね~」
・・・
倫子は乃里の腕を乱暴につかんだ。
「もう帰りなさい!!」
「あなたがいると、、孝文君、おかしくなっちゃうのよ」
多分ね。
「・・・?」
意味が分からない。
・・・「(な、何。確かにおかしい、、というより何だろう。良く分からないような・・・?
・・・悲しい思い出でもあるのかな。・・・わ、私の顔を見るとそういうのを思い出してしまうとか?汗)」
精神に多大な負荷が掛かった時、おかしくなってしまうかもしれない。
いつも図書室を綺麗にしていて、、
本の整理整頓もバッチリで。
怖いって評判の人だったけど。
でもずっと憧れていて・・・
「(声なんて掛けるつもりじゃなかった)」
「(声掛けて御免なさい)」
少しでいいから会話したかっただけなの・・・
暗い夜道。
もっと暗い心で帰る乃里。
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