読み切りOne-shot novel
ギャグGag
- こういう夫婦
9月25日。
誕生日だ。
貴也は思った。
今日は早く帰らないとな。
ベランダ。
「(今日は、微妙に満月じゃないのね。少し欠けてる)」
満月見たいなぁ
「ママー」
くるっ
たっくん、まだ起きてるのー?
ゴシゴシ(目をこする)
「ママー、いつもなんでベランダにいるの」
えー? 笑うママ。
それはぁ、・・・
うん、なに。
急かす貴也。
パパがね、お空、、どこかに、、いると思って・・・
ママさ
「いつもパパのことになると泣くね」
パパがいないと寂しいんだもん!!
「・・・汗」
呆れる貴也。
ぐしぐし
「あたしさ、しょーじきアナタよりパパのほーが好きなのよ」
知ってるよ・・・
と心の中で貴也。
だから、早くパパのとこ行きたいし。アナタ育てるの面倒だし ぐしっ
「・・・」
もぐもぐ(何かを食べているふたり)
「今ね、夜中の3時なのね」
「うん」
子供を夜中まで起こしておくって母親失格なのよね
「いいよ」
ママ 子供だから母親になれないでしょ(呆)
・・・
「アナタくらいの歳の子って、「ママ」って言って「母親」なんて言葉知らない、、わよね
アナタが大人になるしかなかったのね」
「うん」
子供は大人になる。親が子供過ぎると。
(いかにパパが好きかを延々と語るママ(いつものことである)
パパはー、ママのこと大好きだったのよ(すっごい笑顔)
「うん・・・」
・・・?
たっくんはパパに会いたくないの?
あんま聞かないなそういえば・・・
貴也は「パパにあいたいー」なんて本来言う可愛い赤ちゃん時代から
さんっっっざんパパはね~パパはね~(略)と聞かされまくっているのだ。
「どんな人だったの?」などと言ったり興味持ったりするのは、、
散々音楽を毎日毎日聴いている人が、更に寝ている時もお風呂入っている時もトイレ(略)も音楽を聴く、、ようなものである。
このご時勢。
自由に恋愛し、自由に不倫し、自由に結婚し、自由に離婚。
LOVEの質が落ちた。
あまりにも「自由」な時代だからであろう。
だからといって縛りすぎるのも良くないが・・・。
「(自由だからそうなっているんだろう)」
ぼんやり思う貴也。
もう高校生だ。
色んな事情を持つ子を思う。
うちは両親が恋愛しすぎているような気がする。
父親がなくなってもず~~~~~~っと「パパはね~v」と笑顔で色々言う母親。
今もだ。
「(片親だけど、、恋愛してるから、、両親とも(父親は故人)(つまり故人と生人の恋愛)特殊だな)」
片親なんだ、、と憐れみの目で見られても全く何とも思わなかった。
そりゃそうだろう。
父親の話を話すのを「またか、、」的な態度でスルーしようとすると
すごく涙をためるので(母親が)
別に優しい人間でもないのに貴也はちゃんと聞いてあげた。
ああいう夫婦もいい?かもしれない・・・。
すっかりドライな人間になった貴也だが、、
気付いたら、父親と同じように母親が好きになってしまい
「(母親以外を愛せないかもしれない)」
とドライに思った。
まぁそれもいい?かな。
静かに席を立つ。
今日は部活はない。(陸上部)
家では母親がきっと料理すごく下手なくせに(時間もかかる。そして下手。味も全然ダメ)
一生懸命、僕の誕生日のケーキを作ってくれている。
「(早く帰らないと泣くよな)」
少し早足で母親に会いに行く貴也の後ろ姿は
「(どうせ祥子さん←母親の名前です 料理下手なのに作ってるんだろうな)」
と思いながらも早足で帰る、生前の父親そのものであった。