読み切りOne-shot novel
ホラーHorror
- たましひ・後編
マーロン・ブランドって濃い顔してるよな~
ゴッド・ファーザーをテレビで観ながらぼ~~っとしている亮輝。
亮子はスースー寝ている。
「(じーちゃんがキーワードなんだよな 多分)」
若い頃とか・・・
子供の頃とか?
写真で見たことあるとか・・・
・・・
「(あの後 急にテレビを観ることが出来るようになった訳が分からん・・・)」
ふあぁぁ
駄目だ 限界。眠いぜ!
しかし眠ってたら亮子に首を絞められそうで恐かった。
「(どうしてそう思うのか分からないけど 何かが亮子の中に入って絞殺もどきをされそうな・・・)」
亮輝は霊感などは一切ない。
しかし。
肩が痛い。
大雪の中ずっと数時間渋滞に巻き込まれた、この体の疲れを取らねば。
バササッ
恐いけど、、所詮女だ。何かされても(絞殺もどき)大丈夫だろう。
掛け布団を掛ける。
ふー。ゆっくり寝よう。
「(明日は警察尋問並みに色々聞かねば)」
銃口を付きつけられたのだ。
このままにしておけるか
ぷ~~ん
うえ?
朝、ムクリと起き上がると良い匂いがする。
亮子「亮輝!ハニートースト頼んだのよ。一緒食べよ
あ、お茶入れるね」
元気そうな、いつもの亮子の声。
あれ?何かで悩んでなかったっけ?・・・あれ?
昨日のことを思い出す。
『可っ愛い~子だよなぁ』
『キャーッ!!』
『何の真似だ』
走馬灯のように昨日の出来事がぐるぐる回っていく。
(走馬灯とは亡くなる間際の人が使う単語です)
亮子!と一喝したかったが
「ハニートーストちょうだい~」ととりあえず甘えてみた。
「亮輝さ、昨日うなされてたよ。大丈夫?」
亮子が心配そうに言った。
「え?どんな?」
亮子「んっとね、『寂しい・・・』とかって
女の声?だった」
夢見たの?
亮輝「いや・・・」
亮子「そっか。夢見たのは覚えてないの?」
全然。
良かった。心配してたの。うなされてるのかなって。
ずず~~っと「ハニートーストに似合わない」梅こぶ茶を飲み、亮輝は言った。
「亮子、お祖父ちゃん、て何だ?」
ズバッと言った。
「子、、あの子、お祖父ちゃん。・・・って昨日言ってた」
し~~~ん
しばらく沈黙合戦が続いたが。
・・・
亮子は下を向いて言った。「あの、ね。昔お祖父ちゃんにもらったお人形さんがあったの」
そのお人形さんが寂しがっているんだと思う。
ずっと倉庫の奥にしまっていたから。
亮子『ずっと一緒よ。お祖母ちゃんになっても一緒よ。
結婚もしないわ。ずっと一緒にいる』
そんなことをずっと言っていた。と。
亮輝「そういえば兄弟も、親も、、」
亮子は両親が高校時代に付き合って出来た子で、、兄弟もいないし、
その両親の両親、つまり祖父母に育てられて 今まできたのだ。
寂しくて、、人形だけが友達だった、、そういう時期があったのだろう。
念が強ければきっと人形には魂が宿ってしまう。
「ずっと一緒にいるって言ったの。約束破っちゃった」
目をつぶる亮子。
でもずっと物理的に一緒にいられる訳ないし。
その人形もわがままなんじゃないか。呆れる亮輝。
「私もわがままよ。おもちゃの銃を付き出して、私を見捨てたらこれで撃っちゃうからね。
あなたもいいのよ。撃っても。私が見捨てたら撃って
・・・みたいなことを、幼児が言う感じで、、言った」
「あほ!」
亮輝は最後まで言い終わる寸前で一喝した。
腕を組んでむす~~っとした顔でしばし沈黙する亮輝。
ふたりで人形寺・医鷲寺にお参りをしている。
急いで亮子宅へ直行 → 人形をゲッツ → このお寺に来た。 を、やったのだ。(深夜から行動。身も心(心の方が)ボロボロ)
亮輝「・・・『ここにはね、ちょっとした思い出があるの』って言ってたよな」
「うん・・・」
亮輝「ここでじーちゃんに買ってもらったんだ
だから来たんだな。『思い出し・・』」
亮子「うんっ!」さえぎって目をつぶる亮子。
亮輝「(思い出して、って言いたかったんだよな。あの子。あの・・・人形。
亮子が挙動不審だったのは、、そういうことだったのか)」
・・・
あ、あの頃はあの子が私の全てだったの。
「勝手だよね!お母さんみたいだよね!可愛がるだけ可愛がっといて!!
ずっと一緒だよって言っておいて!・・・っうっ、、、それで捨てるなんて、、」
黙って、亮子にハンカチを差し出す亮輝。
(男でハンカチを持ってるのは珍しいかも)
拭き拭きっ
「あたし・・・、、あたし、、、」
亮輝「落ち着け」
御免ね突然・・・。
「いいよ」
お母さんと同じこと、、あの子に、、うっ、、、ぐしっ・・・
おまえの涙で、清算されたからもう、大丈夫だよ。
亮子は顔をやっと上げた。
「・・・今回の旅行、台無しになっちゃったね。しちゃったね」
亮輝「いいよ(ニッコリ) ゴッドファーザー面白かったしな」
亮子「え?」
俺たちは、、いや俺は今回さ。クリスマスにここ来て「ゴッドファーザー」観に来たかったんだ。
おまえほったらかしにして。
後ろを向いて、サッサと車がある方へ向かう。
「ねぇ、、ちょっと待って」 ダーッ!と追い掛ける亮子。
「『ゴッドファーザーパート2』の方が面白いのよ!」
ばっか 俺はマーロン・ブランドが出てないとヤなんだよ
「アル・パチーノは?」
「・・・んじゃ観るか」
俺、濃い顔好きだし。
いつも通りの、察し上手な亮輝。
ホッとしながら、もう一度、、医鷲寺を振り返った。