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ノンジャンルNon-genre
- シベリアンハスキー
シベリアンハスキー・・・
真澄を例える若菜。
タバコを吸えなくて若干落ち着きの無い真澄が訊く。
「シベリアン?美味しいのそれ」
外見は格好良いんだけどね。
格好良いっていうか。「格好良くはないんだけど、男の色気があるっていうか」
真澄「お?」
若菜「中身がおっさんなのよ」
・・・
で
それが『シベリアンハスキー』?
と真澄。
若菜「うん」
シベリアンハスキーは外見はいかにも格好良い犬です!怖いんです!という感じだが・・・
中身はぼーっとしているらしい。
でも、一度その魅力に取り付かれたら、、ずぅーっと虜になってしまって離れられないという・・・
真澄「でも色気はあるんだ。外はいいのか。ま~俺ホラ色気の塊だし。
んで。・・・え?おっさん?中が?」
若菜「うん。何ていうか。見事に分離しているっていうか」
真澄「えー理想的じゃん。まぁほんっと言うとさ。俺中身も格好良いんだけどな?
ほら、どっちもいいと駄目じゃん。色々とさ」
スカイツリーが見えるガラス張りのお洒落なカフェ。
若菜と真澄はちゅ~っと杏仁ジュースを飲んでいた。
でもさ
真澄「こう言ったら怒るかなぁ~~(笑いをこらえてる)
若菜さんてさっ、(あえてさん付け)色気・・・ないよな。ハッキリ言って(プッ)」
慣れているのか、全く怒らない若菜。
若菜「そうなのよ。色気本当なくて。良く言われるわ・・・汗」
あ、じゃあ
「色気無いのもまぁ、、じゃあ中はおばちゃんではない。となるよな。
・・・中が色気?
つうか俺色気色気言い過ぎてるじゃん(笑)」
若菜「どーだろ。そうでもないかな」
知らなかった。
何これ?
立ち寄った本屋。
『あなたは淑女ぶっていますが、中身はまさに娼婦』
真澄「これ多分当たってるね!」
何となく手に取った占いの本。
省略するが、真澄の方は『欠点がない完璧人間』のようなことが書かれていた。
おっさんに負けるなんて!
人がいるというのに叫んでしまった若菜。
店内の人に一通り謝り、本屋を出るふたり。
しかしねぇ
「若菜がそう~いう面があったってのがねぇ。
ん~まぁ。人って色々あるからね。うん。
うん。うん」
ちょっと
若菜「決め付けないで!
私そんな風に見える?」
・・・
あんっがい
ニヤリ
「そういう面あるかもっ、て思うね俺は!」
・・・
若菜は感心してしまった。
「普通は皆信じないし、見事にだまされるのに。
真澄は分かるんだ!
見抜き上手ね」
お洒落をバッチリして憧れの役者の卵、真澄に近付いた若菜。
飾らないところがいい、と気に入られこうして友人のような関係になった。
(注:めちゃくちゃ飾っていた)
何て素敵な人、、といつもドキドキしていたのだが、、
近くで話す度に「おっさん偏差値」の高さを感じ、ギャップに毎回頭がくらくらする若菜。
「(70は軽く行ってるわね・・・)」
可愛い子とか若い子にちょっかいを出すとか
そういうのはレベルの低いおっさんなのである。
というかそういうのは少年に還っただけの人であって。
むしろ女に興味を吹かしている時点で若い証拠とも言える。
真澄はくたびれているのだ。
役者としてインタビューに出るとか舞台に出るとかでは「仕方無く頑張っておしゃれにしている」。
でも結局「それじゃみっともない(←)!」とヘアメイクさんや監督に注意され、他人の手によって整えられる・・・ということを毎回している。
オフではヒゲ剃らない、鼻毛切らない、よれよれのTシャツによれよれの短パン。(・・・)
サンダル。
髪の毛もとかさない。
お酒の強さはおそらくS級(超A級より一歩上)。
父親、母親、お兄さんが肺がんで亡くなったというのに
毎日ピースを60本吸っている。
それでいて、健康診断は「何の問題も無し」と毎年出ている。
話し方もおっさんで、仕草もすべてが・・・
だが、
人生観がとても達観しているというか。
若菜「(タメになるのよね~話していると)」
(※ある意味そういうのもおっさんの特徴?)
しかし・・・
外見がセクシーなので皆だまされる。
お上品な人なんだわ、とか下品な人とか嫌いなんだわ、とか
ファンの人間や、真澄を知っている人間たちはそういう風に思う。
色気の権化とでも言うか・・・
どの男性も真っ青になるほど中身は なのに・・・
いろは坂。
若菜「紅葉キレイだねー」
真澄「ちょっとだけ来るの、早かったけどな」
今9月だけど、10月にまた来ようよ~ と若菜。
サクサクッ
おい若菜~
「結婚でもすっか 10月は俺たちの誕生日だしなっ」
くたびれた雰囲気に良く合う紅葉たちが、、茶色い葉たちがひらひら舞い散った。
ふたりは「夢に出てきそうなくらい怖い顔をしたシベリアンハスキー」を飼った。
子供だったら(子供じゃなくても)確実にちびりそうになるだろう。
しかし中身はぼへ~んとしていた。
えぇっ!
ある日若菜はとんでもない記事を目撃した。
『色気のある男性は「テストステロン」というホルモンがたくさんある証拠です。
いずれそれは「DHT」というホルモンに変わります。
それは毛髪を少なくさせます。
つまり』
・・・
少し涙ぐむ(ひどい)若菜。
ハゲたら余計おっさんになっちゃう・・・。
でも、虜になっちゃったから。
「(ずっと離れられないのだろうな)」と思った。