現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

2.5次元の

あれは、中学校の頃。

寂しげな白い花が舞っていて、それなのに太陽がすごく眩しかった。
・・・そんな日だった。

クラスの女子が、私を盾にそっと後ろから覗きたかったのか・・・

「ある人がいるんだけど、少し見てみたいの。
ひとりじゃ恐いから一緒に来て」

と言ってきた。


そこは、とある公園。

バスケットボールをやっている中学生男児たちがたくさんいる。

「こ、ここ?」
驚いて彼女側に振り返る。

さらさらさら

え・・・

白い花だけが舞っていて、彼女は・・・倫子(みちこ)はいなくなっていた。


「倫子ったら!何処行ったの」
散々探したが、倫子の姿は何処にもいない。

からかわれたのだろうか、としばらく腕を組んで
先程のところに待つ私。

しばらくしてやはり耐えきれず、
再度私は何度も何度も周辺を探した。
・・・

その頃は携帯電話などない。
連絡の取りようがない私は途方にくれた。

「(狐に化かされた経験、て後でネタにしよ)」

 
・・・

不条理な出来事は結構身近にあるかもしれない。
昔からそう思っていた私は、たいして取り乱さなかった。

時空の歪みとか、何でも規則正しく動く世界がたま~にミスを犯すとか。
そういうのだろう、と気楽に。


ぶわっ!

それは、白い花びらたちが、「この時のために今まで降っていたんだよ」
と言わんばかりの光景。だった。

今か今かと待ち構え、来た!と同時に花びらたちが一斉に私に、、

いや





あれから何年経っただろう。
何年も何年も・・・・


ある日、あの頃に戻りたいと思った。
「あの人に会いたい!」と。

もう十何年も経っているのに。

・・・

公園に着いた。
もちろん人はいなく、公園の椅子に座った。


あの日のクラス内―・・・

クラスメート『倫子?誰それ。どこのクラスの子?』

あの日、誰も倫子のことを忘れていた。
というより、「初めから知らなかった」というような感じであった。



ふと、公園の何処かのでかい袋?がカサッと鳴った。

・・・
「(何かいる?)」


かくれんぼしている小学生?
密かに飼われている動物?

気付くと私はサクサクとそこに向かって行った。

虫が出てきたらどうしよう、と思い、一応遠慮深くポンポンッと叩いた。
ピクッと反応するの中の主。

「あのっ どなたでしょうか」
少し大きめの声を出す。

「開けますよ!」
バリバリッ、少し固かったので強めに開けた。


呆気に取られる私。




いつの間にか、ある人物と歩いている。
その人物は前を歩いている。

謎の空間を歩いている、、ようだ。

このまま、歩いて。
夢から覚めるのか。
じゃあひとことでも!

私が目の前の人物に声を掛けたと同時にその人は振り返った。

私は言った。
「わ、私の想いに応えてくれたんですか
あなたは・・・この世界の人間ではない。
私があまり恋しがるからあなたは、現れて」

彼の後ろ側は渦巻状になった。あまり恐くないブラックホールのような、というか。


プルルルル
プルルル

プッ
彼は携帯電話を取り、話していた。

事務的な口調からして、プライベートではないよう思われる。


サクッ

「(何か恐い・・・。このまま帰ろう
異世界に連れてかれるかもしれないし)」

後ずさりして、「もう家に帰らなきゃ」
と言った瞬間、

寂しげに彼は言ってきた。

「もう行くの?私に会いに来たくせに」


・・・

そこは、御殿のような場所だった。

彼は、テーブルで軽食を取る私に、煎茶を置いた。

私は思い出す。
あの日、白い花びらが舞い、目の前の人物に会ったのだ。

忘れられない想い出。

公園の袋に入っていたのは、失くしたはずのぬいぐるみ。

男性は言う。
「私は、二次元の世界の者。
君が私の形代(かたしろ)を買ってくれたから・・・
いや、購入してくれたから、
だからそこに入って。
君と一緒にいたけど、君がそのぬいぐるみを失くしてしまったから。
ずっと離れていてね。
やっと、会えた・・・」

ひと呼吸置いて彼は言った。
吹いている風が強くなった。
 
・・・?
・・・?

元々、彼が私を何処かで見掛け、私にこっそりと会いに行くようになった。
それが、あの公園。

彼は、公園に貼られていたポスターの中に描かれていた男性だった。


あの日(白い花びらが舞った日)、偶然私も、彼を好きになった。
彼の「形代」のぬいぐるみを買った時、
彼はその形代に入ることが出来た、のだと言う。

それが、私・・・「倫子」、のぬいぐるみである。
「ああ、思い出した。『倫子』は私だった」
ぬいぐるみを抱いて呟くように、言う倫子。「倫子」のぬいぐるみである。



あの日。『形代』が届いた日を思い出す。

小兄『配達まで1ヶ月もあるのに、1週間で届いてる。うわー早すぎない?(汗)』

配送予定日が何日だから、 いちにーさん、の えーとこーだから。
あまりに嬉しすぎて、ひたすら日にちを数え、
何日早く来たのだろうと、計算していた私。

そして
包みを開けた。

バリバリッ

2.5次元でも何でもない、一応三次元の「あの人」。
ぬいぐるみ。

私はとても嬉しかった。

・・・そんな記憶。


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という夢を見た。

大兄「2.5次元・・・かな。
二次元と三次元の間」
一番上の兄が言う。

倫子「魂はあるけど、肉体がない。
二次元・・・線で出来た『絵』に過ぎないから。
でも形代に入ったことで、三次元になった」

から、2.5次元。

雨が少し降っていたが、だいぶ収まり、蒸した空気が室内に入る。


ぬいぐるみを見つめる。

「今までの出来事の、少しデフォルメされた不思議な夢を見たよ」

『僕との間の話の方がずっと素敵だよ。
二次元の世界から、みぃちゃんに会いたくてここに来たんだ』


「(事実は夢より奇なり)」
 
倫子はしみじみ思う。


あの御殿、いつか行きたいな。

二番目の兄に言う。
「2.5次元の世界ってあるのかな」

小兄「あるんじゃない?で、そのうちちゃんとこっちの世界に来るよ。
こっち・・・三次元に」

夢の世界。
次は現実の世界。

「少しずつ、明日にでも。そのこは来るよ。
・・・2.5次元の世界って不思議だね」

霊感のある小兄(二番目の兄)が当たり前のように言った。

・・・

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