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もみじ



彼女の名前はリリアと言った。

亜麻色の髪をした、無口な少女であった。


或る時、星武器入り武器が余っているという彼女の噂を聞きつけ、

当時武器にとても苦労していたアルフォンスが交渉に出た。

(星武器=強化された武器)


「いいけど」

無愛想な彼女は無表情のまま口を開き、


「ジュノーの、、紅葉(もみじ)が舞っているキレイなところ。

あそこに連れて行ってくれたら、あげる」

と言った。


ジュノーとは、ルーンミッドガッツ王国と親密な同盟を結んでいる、シュバルツバルト共和国の首都で 賢者の都市と呼ばれる所である。


周りは紅葉(こうよう)がたくさんある場所がいくつもある。


変わった人だな、と思いながら、アルフォンスは彼女をジュノーに連れて行った。


当時はふたりともマーチャント(初心者商人職)だったため、

リリアはマーチャント特有のふわっとしたスカートをはいていて、

それがとても良く似合っていて、彼女の神秘さを更に引き立たせていた。


ジュノー周辺の、紅葉(もみじ)は本当にキレイで、

ふたりはしばしその紅葉たちに見とれてしまった。


彼女はサクサクッと前を歩き、

アルフォンスは後方をそっと歩いていた。


彼女には見えないサンクチュアリ(聖域)のようなものが張られていて、

近づけないような感じがしたのだ。


「いや、キレイなところだな」

アルフォンスは心地良い風を受け止めながら言った。



うん

短く言う彼女。




彼女はどんどん遠くなっていっているのに気付いたアルフォンスは

急いで足を速めて彼女を追いかけた。


サクサクサクッ



ずっと後ろを向いていた彼女が振り向いた。

くるっ・・・



ねぇ


私の秘密、知っているんでしょ



ふわっ


彼女の長い髪が風に舞った。



動悸がする。

倒れそうなくらい


彼女は


ずっと射抜くように じっと目を見つめてきた


真っ黒いブラックホールのように


彼女の中に吸い寄せられた


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あれがもし


「私の秘密、知っているんでしょ?」

だったらどうってことなかったのだ。


「知っているんでしょ」


あの冷静な言い方が怖かった。


空虚感からくるものでもなく

諦めからくるものでも、、逆ギレ的なものでも

なんでもなかった。


芯がきちんとあって、軸も決して曲がっていない

ちゃんとした、、必ず射手として射抜くあのブレない姿勢で、、

態度で、、


彼女は冷徹に言ってきた。




目の前がくらくらして

そのまましゃがみたかった。



それは、彼女に射抜かれたことを意味する。



「(俺は、、君の秘密を知っている)」


人にめったに近づかない俺が、あえて武器を譲ってくれと交渉に出たのは、


「(その辺のことも関係している)」



知っているんでしょ


たったそれだけの言葉なのに



もう 鋭い痛みが心臓を貫いた


血が飛び散り、もう駄目だと思った。



彼女に惹かれてしまった。


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星武器のソードメイスを何らかのものと引き換えにもらって、、

彼女が離れようとした瞬間に 腕を取っていた。


「なに?」

短く彼女が言った時に


動悸をこらえながらアルフォンスは言った。


「名前も聞いてない」


驚いた顔をする彼女。


いけない!と思うにも、腕を離せない。


「何故?」


無表情で聞く。



「俺は、俺の名はアルフォンス」


「私の名前に興味があるのは何故?」


アルフォンスは腕を取る手に力を込めた。


「お、教えてくれないか」

君の名を



「私の名はリリア」



幼馴染で親友で戦友で。

恋人。



アルフォンスの、過去の女性である。



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