そして、周りを見渡して、状況を飲み込もうとした。
自分は誰で、誰が傍にいて、どこにいるのか。
ここはどこなのか。
大きなベッド。
そこの中央で寝ていたエリザ。
起き上がり、靴を探そうとしてよろめく。
くらくらっとしてあやうくベッドから落ちそうになった。
もうどのくらいここで寝ていたのか
ここに寝かされている意味が分からない。
誰かを探して聞いてみないと。
ふらふらしながら靴を履いてドアのところまで行き、ガチャッとドアを開ける。
それだけで重労働だった。
誰か・・・
「エリザ!」
聞き覚えるのある声。
というより、自分の声?
下からいそいそと階段を上ってやってくるのは、自分と同じ顔をした女性・・・
「アイリーン・・・」
懐かしい人。
エリザ「(私の双子の姉・・・)」
よろめくエリザをすかさずアイリーンが支える。
「起きてて大丈夫?大丈夫?どこも悪くない?」
エリザは正直に言った。
「あ・・・ちょい貧血気味・・・」
アイリーン「あ、じゃあちょっとこっち。
まだ休んでいた方が。
ちょっと待ってて」
あ、アイリーン
「ま、待って。あの、私・・・」
な、何?
「どこか具合悪いの?大丈夫?」
過保護なくらい心配するアイリーン。
無理もない。
ずっとずーっと、、寝ていたエリザが数週間ぶりに起きたのだから、、
朦朧とした状態のまま、エリザはやっと言う。
「ここは何処、、」
ここは、
ウィリアム(エリザの夫)が建てた塔で、
アイリーン「今まで、療養のためにあなたをここに寝かせていたの」
・・・
「(ここは何処・・・)」
見慣れない部屋に戸惑いを感じつつ、めまいが止まらないエリザ。
ザザァ ザザーッ
久し振りのお風呂は気持ち良い。
今頃、アイリーンが枕や掛け布団などのシーツ交換をいそいそとやってくれているに違いない。
くらっ
「うっ・・・」
気を失いそうな厭な感覚。
お風呂で倒れれば恥この上ない。シャキッとしないと・・・
エリザは気を引き締めた。
入浴後、アイリーンに言った。
エリザ「な、どうして?」
アイリーン「駄目ったら駄目なの!」
アイリーンはエリザの結婚指輪を外そうとした。
やめて!
アイリーンちゃん、怒るよ!
エリザは頑として抵抗する。
違うの
エリザ、あなたは休まないといけないから
ウィリアムに頼ったら、、
「(あなたのことだから、また無理をして・・・)」
やだ!ウィリアムに会いたいもん
指輪取らないで!
この世界では、指輪でお互いを呼び出すことが出来る。
結婚した夫婦は。
エリザ!
駄目なの!
ウィリアムに依存したら、ウィリアムのために頑張って
「(また倒れちゃう!)」
倒れさせたのはウィリアムだけじゃないけれど、、
色んな人がエリザに無理強いをしたのだけれど・・・
必死に抵抗するエリザを、アイリーンは無理矢理力で押さえつけて、
指輪を抜き取った。
殴り聖職者なので、力が強い。
普通の支援魔法系聖職者のエリザがアイリーンの力に勝てる筈が無かった。
昔は、、
子供の頃は
私がすごくアホで(アホ?) エリザがそんな私をフォローしてた。
「(それなのに)」
何か入れ替わっちゃったみたい
「ウィリアムぅうぅぅ」
哀しそうにエリザは夫の名を呼ぶ。
そのさまを、アイリーンはずっと見ていた。
カチャッ
スースー
寝息が聞こえる
アイリーンは安心した。
大切な人が休んでいる姿を見るのはとても心が安らぐものである。
そして、屋敷の外に出ていき、
近くの浜辺に降り立った。
ザザーッ
ザザーッ
ありゃ相当重症だー
あの気の強いエリザが泣くなんて。
「・・・・・・」
アイリーンは深いため息をついた。
エリザから奪った、結婚指輪を眺める。
ウィリアムばっかり。
「(私のことも、少しは頼ってよ)」
ウィリアムと結婚してから、私のことどうでも良くなっちゃったみたい。
妬けてきちゃうよ
もー・・・
と
しゅぴぴ~ん
突然 プリーストの魂が掛かる。
レンレンだ。
レンレンはエリザの長女で、
超常現象を操る不思議な子であった。
プリーストの魂、とは、彼女が就いている職「ソウルリンカー」が出せる魔法スキルである。
アイリーンは、後ろを振り返る元気もない。
レンレン「伯母さーん。あ、アイリーンさーん
やっほーう」
アイリーンは後ろを振り向いて、
「アイリーンでいいわ。伯母さんでもなんでもー」
と言った。
レンレン「ん~、じゃあアイリーンさん」
アイリーン「ん」
うわ~気持ち良い~♪
レンレンは靴も靴下も脱いで、裸足になって砂浜に足をぱたぱたさせた。
レンレン「ママの様子はど~う?」
聞くレンレンに、
「そうね、、、ちょっと寝かせた方がいいかもしれない」
たるそうに言うアイリーンに、
うっわ、相当悪いわね、、、 と たらりとなるレンレンであった。
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