ある日、度重なる疲労で、ミヤは倒れてしまった。
病院に運ばれ、ベッドに寝かされた。
すぐにお見舞いに来たのはユズルだった。
ユズルは やはり歪んでいただけで本当はミヤを心から愛していた。
深い海の底に眠るキラキラした宝珠には触れさせない・・・
そういうところが憎かったし、羨ましくもあったのだ。
「(何故そこまで強くなれる)」
修羅の血が騒ぎ、
いつしか彼女を 女性としてではなく、、
同じ土俵で戦う「男」のように、、見るようになった。
彼女の前では自分はアリに等しく、彼女は地球ぐらいの重さがあった。
青い顔の彼女を見て ユズルはまたいつものように泣いた。
そんな時、ミヤは考えた。
これはチャンスよね。
このユズルさん、悪い人じゃないけど、お仕置きが必要だわ。
更生させてあげないと。
このままだと本当に人を愛せないまま、、人生送っちゃうね・・・。
根は悪い人じゃないもの。
・・・
いつか、私に対する苛立ちからダグラスに酷いことするかもしれない。
くっ
絶対そんなことさせないんだから。
ザリッ
ザリザリザリ......
・・・
「(まずい・・・気持ち悪い)」
大量の毒薬を飲むミヤ。
特殊な場所、というところで働こうと決めた時に
いざという時のためにモロク(砂漠の都市)から仕入れておいたのだ。
「(復讐、かんぺーき!)」
病院のベッドの上でビシッとピースサインをした。
彼女にとって、「亡くなる」こと
つまり「肉体の損傷」など、「容れ物(いれもの)」が壊れるくらいの感覚だった。
亡くなって土に埋められて。
はいおしまい。
そんなこと、ミヤにとっては「生きているのと同じ」だった。
ミヤが心から、、
いや、魂から愛していたのは「ダグラス」ただひとりだった。
肉体なんてどうでもいい なんて変なことを考えるミヤが
亡くなる前に 自分が亡くなった時に泣き叫ぶダグラスを思い、、想像して。
生まれてはじめて号泣した。
神様 私の大切な大切な
私の命よりも大切な 大事な大事な 大切な大切な
私の弟を、、
ダグラスを お願いします
私の命なんてどうでもいいです・・・
ダグラスをお護り下さい・・・
ダグラス『あなたが何を考えていらっしゃるのか
私には分からない』
御免ね。
私 ずっとあなたが亡くなるまで、、は無理か。
ずっと護っているから・・・
勝手にこんなことして・・・
呆れるよね。
御免ね。
変な姉で・・・。
その数秒後にすぅっ、、と睡蓮の沼にとぷっ・・・と沈むように
息絶えた。
まるで全ての物事が
「無」さえも全部なかったことになったような
そんな空間が漂った。
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