栄養を摂るのは「食べ物」「飲み物」「栄養剤」と言った、口から摂取する方法が一般的であるが、
天界には、光を浴びて栄養を摂る、という概念がある。
美織は出産後に天人特有の数年睡眠を経て、
すっかり体力が落ちていた。
「(栄養たくさん摂らないと駄目よね)」
ぴゅーん。
その日、美織は卵型のドームみたいなところに飛んで行った。
美織「(天人がいっぱい居て邪魔にならないといいけど)」
日や時間によっては天人たちがわらわらひしめいていて、大変なことになっている。
区画でちゃんと「○○の間」などと仕切られてはいるのだが。
?
美織「(ひとりもいない)」
貸し切り状態に驚きつつも、ラッキーと思う美織。
ギクッ!
寒くないのに、、寒くないのにすごく寒い気がする。
太陽の間、月の間、海の間、大地の間、風の間、森の間、、、たくさんあるのだが、
全部回りたいのに(折角の貸し切りだから)これじゃあ寒くて、、
ぶるっ
くるっ
住み処から羽織るものを取りに行こうとして、入り口の方に振り向いた。
ドアが全開になっている。
そうか。寒かったのはドアが開いていたからか、と納得する美織。
美織「外にいたなんて」
喬一も偶然、光を浴びにここに来ていたらしい。
美織の姿を見つけ、折角貸し切りだと思って嬉しいであろう美織の邪魔をしてしまったら、、と躊躇していたらしい。
一緒にドームの中入ろう、と言おうとして美織が立ち上がった瞬間。
もあ~ん
・・・
美織「(うっ!)」
何とも言えない、地の底のような、、暗いオーラをまとっている喬一。
立ち上がったが、そのまま突っ立ち、
また座ってしまった。
・・・?
誰かからミョンホン(天界の1:1対話)でも。
空気を察して待つ美織。
・・・
喬一には似合わない暗いオーラ。
どよん。
どよんよん。
もあもあもあ~~~~ん
・・・
こんなこと初めてだ。
何かあったんだろう、と思う美織。
・・・
しかし、何となく声を掛けてはいけないような気がした。
やっと、
美織「何かあったんでしょうか」
強めに言うことが出来た彼女。
呆れたような雰囲気の喬一。
探しました、とか
子供の傍にいるべき、とか
喬一「私と・・・」
小さく言う喬一。
・・・
びゅうぅぅうぅぅっ!
風が吹く。
「さむっ」と小さく言う美織。
「一緒になりましょう」
喬一は言った。
★子供を、両親のない人間にするのはいけない
・・・
「アレクシスは?アレクシスは都合の良い男で終わるの?
子供は・・・兄上が・・・」
外の空気が寒い。
「違うと思います
それとこれとは」
・・・
「あなたは・・・?」
うぉおぉぉぉおぉ~・・・ん、、、という大気の動きの音すら聞こえる。
敏感になりすぎて、ムカムカしてくる美織。
「(誰?本当に喬一さん?喬一)」
「子供のため?それで変わっちゃったの?」
「それもあります」
そっとその口調は、元の喬一のままなのに。
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