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砂嵐



焼け付く砂嵐。

常に体温以上の熱気がたちこもっている街。


そう、ここはモロク。


ひとりのアサシンクロスが街を歩いていた。

アサシンクロスとは、暗殺者職の上位職である。


収集商人に狩りでの収集品を売り、そのお金で昼食を済ませようと軽食屋を探していた。


「お兄さんかっこいいね、どう、寄ってかない?お兄さんならタダでもいいよv」


道端の商売女が誘いを掛けてくる。

数人の商売女が誘ってくる中をひたすら無視し、彼はそのうち街の外れの誰も来なそうな食事処を見つけた。


ウェイターにサンドウィッチとお酒を頼み、腕を組みながら待っていると、

少し浅黒い、美しい黒髪の女が近づいてきた。

・・・何故こんな女など来そうもない店に、女がいるのか。


「お兄さん、男前ね。うふふ。どう?この後一緒に散歩でも・・・」


やはり誘い文句を投げかけてきた。


ガタッ


クライヴは立ち上がって、お金だけテーブルに出して


「食事はもういい」


そう言って その店を出て行った。


女は呆気に取られて、呆然と立ち尽くしていた。



誘うということは、それだけ自分に魅力があるということで、

その自分が、あっさりと断られたという事実が、とても受け入れられないようだ。



クライヴは魅力的な男だった。

憂いを帯びた眼、端正な顔立ち、長身で風にたなびく美しい銀髪。

人妻やすでに男がいる女たちも、誰もが彼に惹かれずにはいられなかった。




彼の心にいつも響くのは母の声である。


猫たちはね、待っているのよ

帰っておいで と言われるのを。


プロンテラに移動してしまった飼い主たち。

捨てられた猫を、撫でていた母。


「(俺も捨てられたんだ)」


事実は、3歳頃に鳥にさらわれた、であって

決して「母に捨てられた」のではない。

しかしクライヴはずっと、母親に捨てられたと思っていた。


猫のように 捨てられたと、、


いずれ女たちも、母と同じように自分を捨てるだろう。


そんな風に思うと、ひたすら、「女」という生き物が気持ち悪くなった。




自分が信じるのは砂漠の風のみである。



「おーい クライヴー!」


遠くで父・・・正確には義父だが・・・の声が聞こえる。


くるりと振り向いて父の姿を確認、「何、父さん」と答える。


「おまえな、また女の子を泣かしたんだって?」


クライヴは肩がカクッ、と落ちるのを感じた。


クライヴ「勝手にやってくるだけだよ」


「何、また勝手に女の子が寄って来んのか?」

クライヴ「で、帰っただけ」



ヤシの樹のような長身のシャドウチェイサーは肩をすくめた。


シャドウチェイサーとは、ならず者的な職があるのだが、その最上位の職のことである。


なーんで俺が苦情言われなきゃいけねんだろな。
まぁいいんだけど。


ぶつぶつ文句を言う義父に、

父さんは俺と違って社交的だから。とクライヴ。


おまえもちょっとは話してみたら?


そんな話をしていると、


「ズッコケさーん!ちょっと来て下さいよー!」


遠くから父を呼ぶ声が聞こえる。


ズッコケ「お、ちょっと呼ばれちまった。敵が詰まってんかな。
ちょい行って来るわ」


さかさかと走って行ってしまった。


ぶおおぉお


砂嵐が吹き抜ける。



遠くから音楽が聴こえてきた。

モロクに昔から伝わる民謡音楽だ。


不思議と心が落ち着く。


「ちょっと、休憩もいいかな」


クライヴは近くの小さなオアシス(湖)を探しに街を出て行った。



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