強大な魔法故に、遥か昔に封印された魔法を「禁呪」と呼ぶ。
稀に、その「禁呪」を持ってしまうマジシャン系職(魔法使い職)がいる。
本当に稀で、100年に1人とか、1000年に1人などと言われている。
メイチーは、その禁呪を持ってしまったが故に、、
母親を幼い頃に亡くした。
力の強い子を産むのは命を落とすのと同じ。
・・・とまで言うのは大袈裟ではあるが、
「禁呪」を持つ子供を生むのは「そういうこと」に近くなるのと一緒である。
勿論、生まれる前にそれが分かっていて、あえて産んだ訳ではない。
もしも禁呪を持っていると事前に分かっていれば、
母親は恐れをなしてメイチーを産むのを諦めていたかもしれない。
メイチーは孤独な少女時代を送った。
誰も、自分が強大な力を持っているなんて知らない。
もしも知ってしまったら、みんな去ってゆくだろう。
或いは興味本位で近づいてきて、付きまとってきたり、おかしなことをしたり・・・そんなことをする人が出てくるだろう。
一応、シャオイーやズッコケという友達はいるにはいたのだが。
そんな時、
僕も禁呪を持っているんだよ
と言ってきたウィザード(魔法使い職)の男性がいた。
メイチーが魔法を覚えるのに疲れて、
ゲフェン(魔法の都市)の外で休んでいた時に、
後ろから声を掛けたウィザード。
パシャパシャと裸足で川の水で遊んでいたメイチーはぎくり、として振り返った。
メイチー「誰だ、おまえ」
メイチーは王家出身だった。
しかし正妻の子ではないし、居辛い雰囲気と 母親がいない寂しさで
早くからお城を飛び出し、冒険者になったのである。
そして友人もいないこともあって、「正しい、、というか一般的な言葉づかい」
に疎かった。
「おまえ」なんてすごい言葉に当初面食らっていたウィザードだったが、メイチーの身の上を知り、次第に仲良くなっていった。
ふたりは、
それが自然の摂理なのか。
隣り合うようになった。
流れる水のように。
雲が動くように。
火が美しくゆらめくように。
樹々が優しく風で揺れるように・・・。
例えを言うならば、あっさりとした柚子(ゆず)のジュースのように
ただ、ただ、自然と手を取り合うものであった。
ウィザードの名前はアレクシスと言った。
メイチーはとても深い闇を持つようになった。
そしてアレクシスを避けるようになってしまった。
嫌われたと思ったアレクシスは、数年経ち、、
とてもとても冷たい目を持つハイウィザードになった。
(※ハイウィザード=ウィザード系の上位職)
花びらが舞う 川辺
ふたりはたまたま出会うことがあった。
メイチーは後ろを向いたまま、「あっちに行け」
と思っていたが、
アレクシスはそっと近づき、メイチーの両肩を抱いた。
メイチー「(あれ?)」
何故だ?
こういうの普通あるのか?
混乱するメイチー。
アレクシスは何かを言おうとしていた。
その瞬間、
バシャン!!
メイチーは川に飛び込んでしまった。
そのままスイスイと泳いで、、、
向こう岸に着き、、
タタタタと 水を撒き散らしながら走り去ってしまった。
或る時、夕暮れ時に、やはり川辺で 腰を下ろして
メイチーは歌っていた。
忘れられないことも
みんな
流してしまいましょう
どこへいくか分からないけれど それらが
でも
流した分だけ 愛が届けられるわ
私は たくさんの愛が欲しいけれど
とても欲しいものがひとつあるの
遠い遠い あの日の想い出
忘れられない想い出
あの日のあなた
牡丹の人
カサリ
木の葉を踏む音。
ん、固まるメイチー。
「(聞かれてた?)」
人に聞かれていたとは何てことだ!
どうすればいいのだ!
両手で頬を覆い、 後ろを向くのが怖くなったメイチー。
「キレイな声だったね」
あれ、その声は、、、
くるっと振り返る。
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