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対(つい)



美織「ん、もう!」

がたーん!


美織が座っていた雲の椅子から勢い良く立ち上がる。


びしっ!と喬一を指さし、
「ちょっとナンチュンが得意だからっていい気になるンじゃないわよっ!」
と言った。


喬一は落ち着いて、

ずずーっとお茶を飲みつつ、
「人に指をさしては駄目です」
と静かに言った。


美織「っあっ、、やだ。そうよね 御免なさい」

喬一「この前もそうしてたような」

美織「えっ この前もそうしてた?」

喬一「うん してた!」


美織はむぅ~っとバツが悪そうに下を向いた。


ナンチュン、とは天界での、将棋や碁のようなものである。


いつも勝負して、喬一が大抵勝つ。


美織「は~ぁ。勝ったらあんなことやそんなこと考えてたのに。
じゃ、約束ね。 何でも聞くー」

喬一「じゃー」

美織「何でも言って。天帝に逆らうことだけは勘弁だけど」

喬一「どらやき1年分!」

美織「え? い~けど。 どのブランドのが欲しいの?」

喬一「何でもいいですよ」

美織「じゃーモロク(砂漠の都市)に売ってるあの一番安いのを」

喬一「王室ご用達のものを」



エリザ「(楽しそうだなぁ・・・)」


先程から、美織の愛犬という茶色い犬を撫でながら、
ふたりの様子を見ているエリザ。


「じゃあそろそろ」

「あ、、そうね。時間ね」


喬一はどこかへ行くようだ。


ウン!とこの前の美織のように雲を呼び、(何故かシェパードの犬の形をしていた)
どこかに飛んで行ってしまった。



い、犬の形??

驚くエリザ。


美織「あーうん。犬と合体してるの。雲。

二匹?いるのよ。

夏樹(ナツキ)と春花(ハルカ)っていうオスとメスでね~」


何がなんだか訳が分からない。



エリザ「・・・きょ、喬一さんは何処へ?」

美織「わっかんない。
あの人色んなところ行くの好きだから」


美織の話によると、

喬一は 街とか ダンジョンとか 色んなフィールドとか 海とか

色んなところに行きたがるのだそうだ。


美織「旅行?が好きなタイプっていうか。
あちこちうろちょろするのが好きみたい」


それでたくさん見聞を広めて、知識を得る、、

仙人らしい

とエリザは思った。


エリザ「美織さんは? 一緒に行かないのですか?」


美織「最初は付いていったけどさー 
私はじっくり派、
あの人はさかさか派

本だって、私は熟読派、
あの人は速読派、

合わないのよ~

だから諦めたの」


へぇ、、と言うエリザに、更に美織は言う。

美織「しっかもさ聞いてよ!
一緒に居たがるっていうか私が居ないと不機嫌になる時もあるくせに、
居ると居るで「ひとりになりたい」ってびゅーんっていなくなっちゃったり」

気まぐれなのよね~

と大きなため息をつく。


エリザはウィリアムを思い出した。


エリザ「私の夫、、元夫みたいですね」

くるっと振り向いて美織が言う。


「えっとウィリアム、、さん、か」


はい、と答えるエリザ。


そういうの、我慢出来ないから 結局泣いて「ジョ"ゼブぅぅうぅ」と袖をつかんで、
冷たくしないでよう と泣いて、

ぎょっとするウィリアムが折れる、、、


そんなことを当然話せるはずもなく。。



美織「喬一さんは~ まぁ、、もう慣れたけどね。
アレがあの人の個性っていうか」


どこかで聞いた台詞だ。


エリザ「(このふたりはお互いを尊重し合ってるのね)」


ところで、先程からエリザが何故寒さに平気なのかと言うと・・・


美織と喬一が仙術のようなものを、、或いは魔法かもしれないが。
そういうものを掛け合って、
人間が1週間崑崙山で過ごせる服や靴などを作り、

エリザに着せたからである。


1週間しか持たない。

毎回毎回、1週間経つごとに服を作ってもらうなんてアレだろう。

第一、その時にうろちょろしている喬一さんが都合良くいるとも思えない。


美織「まードーンと任せてよ!」

美織は下手なウィンクをしながら言ってくれたが、

どうなってしまうのだろう、、
嗚呼、本当に迷惑を掛けて御免なさい、、と心から思った。


だからどうにかなる訳でもないが・・・。


ただ、美織と喬一を見ていると、自分とウィリアムを見ているようで

現実から逃れられるような気がするのだ。


全然性格とか顔とか違う。

人種も違う。(※エリザとウィリアムは西洋系、美織と喬一は東洋系)


でもこのふたりは私たちに似ている。


何となく・・・


光と影みたく そんな、対(つい)なふたりを見ていると

何でも叶う気がするの。


「(ウィリアム・・・)」


貴方にも見せたい。


そんなことを考えて、いつの間にか寝入ってしまうエリザだった。
(すごく疲れていた)



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