アーシェ
レンレンは前世のクライヴの名前を呼んだ。
あ・・・
顔を上げるクライヴ。
「・・・・・・」
目の前にいるのはレンレン。
レンレン
なのに・・・
別にね、いがみあってなんて いないわよ
見透かしたように言うレンレン。
やめろ!
それ以上言わなくていい
クライヴ「視るな!」
頭の傷が増えるじゃないか!
「視させてよ」
その声は子供じゃないみたいだった。
「・・・・・・」
いがみあってなんてないわよ
両親のことだ。前世の。
・・・
目に不思議な光を称えた(ように見えた)レンレンは、
「お父さんの片想いよ
いや、厳密に言うと両想いなんだけど」
お父さんはお母さんを愛しすぎて、、
すごく歪んじゃったの
すごくすごく
暗闇と、、花びらで覆うように
レンレン「暗闇は『憎しみ』 花びらは『愛情』
たくさんたくさん積もって、
今の世にまで・・・」
クライヴ「(嘘だ! そんなの信じられるか! 絶対嘘だ!)」
あんな冷え切った両親にそんな要素がある訳ない!
クライヴ「有り得ない!」
クライヴは叫んだ。
愛と憎しみは隣り合わせなのよ
あの声でレンレンが言う。
ブンブンと頭を振りながらクライヴは言う。
「違う!絶対ない! 絶対有り得ない!」
そのうち、分かるわ
きっと
レンレンのその言葉はとても信じがたかったが、
一瞬、その言葉にすがりたくなった自分に驚いた。
「お父さんは地界に行って、」
「お母さんは充分報いを受けた。『刻印』によって」
あなたの苦しみ、悲しみは、ちゃんとこういう形で、
天罰となって両親にキッチリ注がれたのよ
レンレン「あなたの悲しみは無駄じゃなかったの」
あなたが流した涙の分、苦しんでるわ。
或いは、苦しんだわ、ふたりとも。
そして、、
あなたは「愛し合った夫婦」の中に生まれたの。
今だって、、
あなたは鳥にさらわれてしまったけど、、
だから分からないかもしれないけど
愛し合った夫婦の間に生まれてるわ
だから、
だからアーシェ
そこにいていいのよ
自分を存在否定しないで
クライヴはレンレンの話をずっと聞いていた。
「(お兄ちゃん、じゃなくて「あなた」 と呼ぶということは・・・)」
くっ
くっ
ううっ
思わず下を向く。
「いくじなし!」
え?
クライヴは驚く。
どこかで聞いた声?
もう!いいじゃないの!
捨てたことなんてこれっぽっちも気にしてないわよ!
罪悪感になんて苦しまなくていいのよ!
ほんっと面倒臭い人!!
バッと顔を上げる。
その
「その声は!」
レンレンがぎゅっと唇を結ぶ。
やっぱり
「そうか・・・」
クライヴが視線を下に落とす。
御免、御免、
いつも情けないな、、俺
ずっと、、
「ほんとよ!」
ばーか
顔を上げ、寂しく微笑するクライヴだった。
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