「ハーフ・・・」
思わずつぶやく美織。
ハーフっていいことないわ。
どっちかに、、AとBだったら、
Aには「Bの人間だろ!」って言われて、
Bの人間には「Aの人間!」って。
何度それで厭な思いをしてきたか。
美織もハーフであった。
父親は国王で母親は東洋系の側室の女性。
父は国王のため姓は無く、母親は東洋の姓があった。
所詮自分は正統な血を受け継ぐ王家の人間ではない。
ならば母親の姓を受け継ぎ、一般人として生きるのがいい、
そう美織は思った。
ハーフは普通 西洋と東洋両方の名前をもらうのだが、
「ふたつの名前なぞ要らん。私はひとりだからだ」
注釈するが、幼い頃の美織はこういう口調である。
もうひとりの私なぞ もはや私ではない。
居るならば私の中にこそ存在する。
存在は、ただひとつだ。
名前はひとつでよい!
「どちらの名前が欲しい、娘よ」
父、国王は言った。
「当然東洋だ!楽しそうだからな。2個あって 呼び名」
・・・
そうして、美織(メイチー)の名を授かった。
西洋読み:メイチー
東洋読み:みおり
でもアレクシスは普通に東洋・西洋 両方持ってるよね。名前。
ぼーっと・・・
宿のベランダに腰掛けてチューッと百歳茶を飲みながら考えていた。
ハーフだからかしら?
って玄宗の意味不明な行動、言動に そう思っちゃったけど。
「(私だってハーフ・・・)」
まぁ一種類だけってのも寂しいから、二種類ある「ハーフ」ってのもいいもんだけどさ。
・・・AとBの話で、AからもBからも拒まれるっていう宿命はあるけどね。
(冒頭の話である)
ちなみに「姓」であるが、この物語では全然出てこないし、出す必要がないので出してないが、
皆持っているのだ。
美織の姓は「姚(ヤオ)」という。
姚 美織 = ヤオ メイチー
姚 美織 = よう みおり = →天界読み
喬一は「馮」
玄宗は「龍」である。
馮 喬一 = フォン シャオイー
馮 喬一 = ふう きょういち = →天界読み
龍 玄宗 = ロン シェンホウ
龍 玄宗 = りゅう げんそう = →天界読み
(ハーフは姓をふたつ持つことになる。
玄宗は「メイフィールド」という西洋姓も持つ)
チューッ(百歳茶)
(本当にありそう)
「寒い・・・」
寒くないのに何故か口に出す美織。
冷たい目をした玄宗。
名前を呼ぶなって言った玄宗。
私を拒むの?
いいじゃん 名前くらい。
お揃いでしょ
東洋名。
玄宗・・・
玄宗は何か考えることがあって、ここに居ずに別の場所に行っていた。
あの冷たい目。
何があるのか知らないよ。
何があるのか知らないけど
教えてくれたっていいじゃん。
教えてよ。
喬一さんのこともあるのに。
喬一さんも
玄宗も
・・・
いなくなっちゃうの?
冷たい目でもいい
名前呼ぶな言ってもいい
傍にいさせてよ
ひとりは寂しいんだ。
孤独なんだ。
秘密作られるとどんどん閉鎖してっちゃうよ
秘密作らないでよ
形だけでも夫婦なんでしょ?
げん・・・そう・・・
すやすや
そのまま 頑張ってクンファに入って眠りに入る美織。
玄宗、、と寝言を何度か言った。
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