だいぶ寒さが沁みてきた11月。
狩りを終わらせ、今日の分のレベルアップノルマをこなした帰り道。
粉雪を身にまとわせてレンレンが言った。
ん、と振り向くアルフォンス。
アマツっていう国があるじゃない。
アルフォンス「ああ あの」
一年中桜の花が舞い散っている、お城なるものがある東洋系の国か。
「そこね、冬に「鍋」っていう食べ物が出るらしいの」
ナベ?
アルフォンス「聞いたことないな」
レンレン「温まるらしいよ。健康にもいいみたい」
ナベ・・・
アルフォンスはあまり興味が無さそうだ。
「だからさ、ノルマ一応クリアしてレベル1個上がったんだから明日行こうよー」
この世界では、冒険者は「狩り」というものでモンスターを倒し、
それにより得た経験値なるものを積み重ねることで「レベルアップ」を果たし、
一定数にまで上げて上位職に転職する、という冒険システムがある。
俺それより勉強したいんだよね
大陸別気候把握とか
各地方の名産品とか
レンレン「何でそんなものに興味ある訳」
アルフォンス「気候は、把握することで 何処へ行っても風邪ひかなくて済むだろ」
名産品はただの趣味だ
レンレン「やっだ もっと一杯動き回ろうよ
せっかく・・・」
もう散々動き回っただろ
レベルアップまで動き回りすぎて体中が痛い
レンレン「お年寄りじゃないんだからさ。
レベルアップで根を上げてたらすぐ枯れちゃうわよ」
アルフォンスは白けた顔をして片手で頭を押さえた。
「そりゃ、、君に比べたら誰も年寄りだ」
レンレンは呪いにより、永遠に10歳以上歳を取れない体になっている。
レンレンはあれ?と思った。
「アルフォンスって歳いくつなの」
ん、と顔を上げるアルフォンス。
24
ふーん、、、と聞いて、レンレンは突然切羽詰ったような声を出した。
「い、以前、荒れてアサシンになってた時期があったって、、言ってたよね」
(※アサシン=暗殺者職)
はぁ
何突然。
アルフォンスはハテナ顔になった。
レンレンは「そ、それは何年くらい?」と少し怒ったような声で言った。
??
訳が分からないが、レンレンには隠し事は出来ない。
素直に言うしかなく、アルフォンスは「うーん」と思い出そうとし、、
「1年、、、かな」
と言った。
レンレンは続ける。
「あ、あの、、それで鍛冶職人職に戻って、、今になってどのくらい経つの」
今度はすごく沈んだ声だ。
レンレン?
アルフォンスは呼び掛けるが、
何だかすごく辛いのを我慢している顔をしたレンレンを見て固まってしまった。
「何だか分からないが、、
2年だよ」
君と会ったのはその間の中の 半年かな。
それを聞いた瞬間、レンレンは「何だ!じゃあ大丈夫ね!」
と両手をバッと上げ、嬉しそうにはしゃいだ。
「(・・・何が?)」
全く分からないアルフォンス。
住み処が見えて来て、颯爽と掛けていこうとするレンレンをはっし!と掴み、
(それこそ猫を掴むような感じで)
「待て、レンレン君」
説明が抜けている
どういうことだ?
と言った。
ちょっとぉ、何やってんの?
あたしの奴隷の分際で!
無礼者ぉおおお
じたばたじたばたして逃れようとするレンレン。
「(奴隷、、いつの間に・・・)」
たらりとするアルフォンスだったが
「俺の歳と君の反応の計算式が良く分からない」
と自分でも良く分からないことを言った。
ズズーッ
ダイニングでお気に入りのチョコレート茶(本当にあります)
を飲むレンレン。
「不良はいけないと個人的に思ったからよ」
ハァ?
どういう意味だ
「(俺は酒も煙草も未成年時はやっていないぞ)」
酒も煙草も女も、、、
と言おうとして
流行り病で亡くなった、昔の恋人を思い出した。
「(まさかそれと関係しているのか?)」
確か、亡くしたのは21の時だった。
荒れてアサシンになっていた時期があったのは 彼女の逝去があったからだ。
レンレンはそれを知っている。
24、という歳を言って、1年、2年、とさっき言って、、
24-3=21・・・
『じゃあ大丈夫ね!』
?
意味不明な台詞。
不良はいけないと個人的に思ったからよ
さっぱり分からない。
カチャッ!
乱暴にティーカップを置くレンレン。
「あれ。勘違いかも!」
??
何が。
さっきからさっぱり分からないアルフォンス。
まぁそのうち説明が入るのだろうと思っていたら。
すっごいことが起こった。
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