「(考えろ俺)」
・・・
俺たちが出会ったのは
リリアが13歳、俺が14歳。
「私の秘密、知っているんでしょ」
あの時、
「(10年前だった)」
エコーのように響く彼女の声。
胸の動悸が聞こえる。
思わず目をつぶる。そっと、、
まだ?
いや、もう過去の話だ。
ずっと忘れられないのは
大事な思い出だからだ
「(そして・・・)」
あれが10年前で、
だとしたら、
「(13年前か)」
リリアが ズキッ
胸が痛む
リリアが ・・・
リリアが売られたのは
リリアの家はとても貧しかった。
そもそも子供なんて育てられる余裕もない程お金が無かった。
冒険者になるのにはある程度のお金が要る。
良い装備を買ったり、何より最初の基本物である回復剤などだ。
冒険者にならずとも、生活者になるには、、言わずもがなであろう。
リリアは父親が特殊だった。
せっかく冒険者なのに、、次々と職を変え、その都度装備、防具を全部売り、
また一からやり直す、、
一度や二度なら、たまたまその変えた職がとてもその人に合っている場合なら
むしろお金だってたまるだろうし、精神的にも満たされるだろう。
しかしリリアの父は、何度も何度も「違う」「これは合わない」と言って
職を変えた。
世の中には冒険者になりたくても、ずっとなれない貧しい人間たちだっている。
リリアにはたったひとり、心からの親友がいた。
マリアンという名前の、セミロングの明るくて元気な少女だった。
リリアはその頃 男の子顔負けのお転婆ではねっかえりの、どうしようもない男の子みたいな女の子だった。
マリアンは冒険者になりたかったが、「お金が足りなくて」と
ジャワイ(新婚地)の従業員として働いて、頑張っていた。
リリア「まず冒険者登録を、国王陛下の前でやるのよね」
マリアン「そこでの適正テストで、不可って出たらもう駄目だし」
リリア「『可』になっても、お金払わないといけないのよね」
マリアン「一番最初の出費だもん。しょうがないよね」
それさえ越えれば何てこと無い。
そして、それが終わって、初めて侍従の人間たちから
「冒険者」としての祝福が体の隅々まで掛けられ、
(隅々、なので素っ裸にならないといけない。
アクセサリーも全部はずす)
基本装備、回復剤、冒険指南書等を授けられ、
やっと「ノービス」という冒険者の称号が得られる。
冒険者にならなければ、いろんな場所に徘徊しているモンスターに襲われることはない。
冒険者としての体、になっていないのだから、モンスターが襲ってきても「スカッ」とすり抜けてしまうのだ。
マリアン「でもあたし! 絶対冒険者になるの!」
ボロボロになっても、
「モンスターなんていっぱい倒しちゃうもんね!」
リリア「あははーっ マリアンらしい」
マリアン「リリアは冒険者になるの? 当然なるでしょ?」
リリア「でもうちは」
お金がないから
マリアン「だからー リリアも私みたいにジャワイの従業員とか
お金、、自給の高いトコで働きゃいいのよ!」
リリア「自給の高いとこって」
危険なところばっかなんだもん。怪我したり
そんな時だった。
大富豪が集う、、と言ったら大袈裟だが、
経済的に余裕のある者たちが集うリヒタルゼンの街から、、
本当の「大富豪」の家の息子が、リリアをもらいたい、という申し出があったのだ。
「迎えたい」ではない
「もらいたい」である。
お金は10億Zeny。
稼いでいる冒険者からするとあまり大した金額ではない。
しかしリリアの父親は、その金額に卒倒した。
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