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霧のように



・・・・・・・・・
しばらくの沈黙。

マクシミリアン「あれな話だが
怒ったところでどうしようもないな」

そんなことを言っているマクシミリアンの片腕がぷるぷると震えている。


「若さゆえの暴走なんだろうけど。

やっぱりママが甘やかしたんじゃないの?
パパかもしれないけど」

ティルルはもう怒る気力もないようだ。


言葉を発するのも億劫そうなマクシミリアン。


ふふっ

ティルルは笑った。


大丈夫よ。

立ち上がってしっかりと言った。


「メイチーさんがそういう人を放って置くと思う?

あ、メイチーさんていうのは、、ちょっと、説明しづらい人なんだけど」


ティルルはとりあえずマクシミリアンに「メイチーの天文学的な恐ろしさ」を語った。


「はははっ そのジェネティック終了のお知らせだな」

珍しくマクシミリアンが笑っている。


え、ええーっ!?

白い髪の女の子が声を荒げている。


可愛らしいソプラノの声。


ティルルが言った。

「今は通信(1:1対話)が出来ないから連絡取れないけど。
取れた時のことが見ものね!
あははっ」


白い女の子はぽかーんとしている。

な、なぜ、、

しゃべっている女の子。


「どうして、ここにその人、、来なかったのか、、な・・・?」


ふっ

嘲るようにティルルが横目で女の子を見た。


「頭が高いのよ。あなたが「どうして来なかったのかな」何て気安く言えるような存在ではないわ。

身分をわきまえなさい。無礼者!」


ピキーン!!


女の子も、マクシミリアンも、、氷の彫刻のように固まった。


・・・

女の子は無表情だったのにすっかり表情が戻った。


「王とか、皇帝とか、、ええとそれ以上の存在だったんですね」


ティルル「いいえ」

前までは違ったわ。

でも最近、、あの人は・・・

海の。

ピキキッ

(※本編「賢者の海」参照)


胸の痛みを感じてぐっと押さえるティルル。


マクシミリアンは「視」た。

ティルルが胸を押さえた瞬間で流れた映像。

無防備の時には「視」やすくなる。


「・・・・・・」

マクシミリアンは実は優しい男だ。

こういう時、何も言葉が出ない。

何も・・・。



女の子は言った。

余裕が出来たのだろう。


「この世界は『ふたつの世界』で出来ています」


ひとつは、「人間の弱さを包む慈愛」と

もうひとつは「人間の弱さに対する憎悪」です。


最初のは、私がイラストに描いたポリン(ROの最弱モンスター)たちの精神で、

もうひとつのは私が息絶える前に抱いた感情です。


「この白い世界

本当の世界であり、

でも一方では私の憎悪、、「黒い世界」でもある。

だから白く白く、と覆い隠していたのです」


「(確かに)」

邪悪さと清純さが入り乱れて、本当の白とメッキのような白が混在しているような錯覚に陥っていた・・・。


女の子は言った。


「憎悪の方が少し強く、、だから白いメッキのような世界になり、未練がこの空間をずっと長く持たせてしまった」

「でももういいです・・・」

「メイチーさんに、私が得た精神性の全てを捧げ、私は消えます」

「ウンバラ(ウータン族の村)に私の作った、、イラストが実体化したポリンたちが私の家
(住所を詳しく教えている)にいます。あの子たちをどうぞ宜しくお願いします・・・」


すぅっ・・・


ティルル「待って!待ってよ!」

急いで掴もうとする。


いきなりなの?

もっとこう・・・


スッ・・・


サーッ

ササーッ


すすき野原に 優しい風が吹く。


ササーッ



サーッ


ガクッと崩れ落ちる。


「みっ 短い間 だけでもっ あたし あなたのお母さんだったんでしょ」

「お母さんに、お、お別れの、、キスもしないわけ」


うっ

涙が湧き出る


マクシミリアンが傍に行ってしゃがんだ。


「元気だせ」



きっとこのすすき野原も・・・

ログインし直したり


或いは時間が経てば、、

スーッと消えてゆくのだろう。


不思議な感覚である。


「(あんなに出たいと思ってたのにな)」


「パパ」

あの可愛い声を聞いて

この世界から離れてしまうことにとても寂しさを感じていた。


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