空を見上げたら雪が目に入った。
うはー
女性『もう飽和しちゃったから。幸せが。
カンストしちゃったから。
満足ぅ』
リンリン『ぶぅー!』
女性『お兄ちゃんとー幸せになってね
世界一愛してるわv』
リンリン『まむわ!』
柔らかい雪が降る道。
女性『マーロウ様』
マーロウ『いらっしゃい』
パチパチ
毛布にくるまれながら、暖炉の前でマーロウと女性はコンソメスープを飲んでいた。
マーロウ『大丈夫ですか。持ちましょうか?(リンリン)』
あ、はい
ほぎゃっ あはーっ
まだ赤ん坊のリンリンが手を伸ばしてマーロウを見た。
メアラ教会。
小さい教会だが、とても高名な神父がいる。
マーロウ神父である。
女性が消滅(この世界で言う『逝去』)してしまうため、
娘のリンリンを、、と託しに来たのだ。
逝去という概念は『空気中に溶けてゆく』である。
病気、事故の場合もある。
7年ほど前からその時期をそれぞれが『気付』き、
静かに消えゆく。
女性『息子は少し前に養子に出しまして』
マーロウはハッとした。
マーロウ『ああ、あの。モロン君でしたっけ?
凄い子ですよねぇ』
ニッコリ笑った女性が言う。
ええ
『あの子は心配ないんです。
もう大きい(5歳だけど)し』
チャラッ
バサッ
ドサドサッ
金貨、お札(おさつ)、奢札(しゃさつ)を出す女性。
寒い道を歩いてきたので手がかじかんでいるようだ。
奢札・・・この世界で言う薄い板で出来た小さな「お金」
「お札」の上の概念。
一枚につき最大10億Zeny。
女性『全てのものを売りました。
消耗品も全部』
この養育費でリンリンを育てて欲しい、という訳だ。
こういうことはマーロウは断るタイプなのだが、
女性の瞳を見て、
何かを感じ・・・引き受けたのだった。
モロンも・・・り、リンリンも、、
愛してるんです。
ずっと幸せになって欲しい。
モロンは大丈夫、、だろうけど
リンリンも・・・だから。
マーロウ『落ち着いて。大丈夫、大丈夫ですよ』
マーロウは優しく笑った。
モロン・・・リンリン・・・
私の宝物。
でもお母さんはいなくなってしまう。
御免ね・・・
両手で顔を覆い、すっかり取り乱し始めた女性
李(リー)家。
義父『おいモローン!』
ドスドスドスドスドスッ
廊下を乱暴に歩く音。
おまえ、また1個階級が上がったって?
大伯父連中がまた騒いでるんだ。
養子のおまえが・・・血の繋がってないおまえがどうの、、やれやれ
モロン『言わしておけばいいんです』
義父『その言いよう・・・生意気言われても仕方ない気が・・・』
・・・
アルベルタ(港の都市)で買ったパイナップルを切り、
サクサク食べるふたり。
義父『やっぱあれだな。母親の血だな』
ピクッと反応するモロン。
小さい子、だったかな。
『お、母親に対して『小さい子』はないか』
モグモグッ
思い出しながら言う義父。
ちらっとモロンを見る義父。
モロンは母親を思い出すたびに、優しい顔になるのだ。
(これ『のみ』だ)
ま、気にしないこったな
『いい歳こいて若い奴をねたむなんざ、あれだ。んー男の風上にもおけねぇ
気にすんなよ、モロン』
モロン『気にも留めてませんが』
きゃっほー!
『ブラザー(兄)。あ、ブラザーだと『修道士』って意味・・・』
マーロウ『兄貴だよ?どーするリンリン君』
会いたい会いたいーっ
飛び上がるリンリン。
10歳の誕生日に「兄がいるらしい。養子に出されていて、5歳差。リンリンと」
と教えてもらった彼女。
マーロウ『彼は相当・・・凄いよ。釣り合うためには、、いや無理はしなくていいんだけど。
んー』
きゃー!っ
そんなに頭良いんだ!
『私勉強頑張りますっ』
マーロウ『・・・いや・・・・・・ちょっとあれは。でも勉強を頑張るのはいいことだからね。それはリンリンのためになるかな』
それから、、徹夜で勉強をするリンリンになってしまった。
(睡眠薬飲んでも体が動いて勉強する)
しかしモロンには足元以上に及ばなかった。
キング・モロンと不思議聴力少女・リンリンが出会ったのは・・・それから5年後のことである。
未だにふたりは、お互いが「実の兄妹」であることに気付いていない。
前回:血の繋がりが全てではない
今回:が、血の繋がりが何かの絆になることはあるだろう。血、大切に
女性『お兄ちゃんとー幸せになってね
世界一愛してるわv』
リンリン『まむわ!』