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小さな世界 | 現代ファンタジー小説

小さな世界 > 第2章「パン・オンライン」

秘密

えいっ えいっ やーっ!

パン・オンラインに降り立って2日目。

鬼気迫る顔で愛花と剣の練習をする理々。

後ろの樹に体を預け、ぼーっとそのやり取りを見る裕也。

『行きましょうよ!あ、やなんだ』

裕也「(今更だけど、あの誘いに乗ってなければなぁ)」

今頃は講習室で授業をしているんだよなぁ、と思う裕也。
時間が違うので、こちらの時間とあちらの時間は違い、実際は時間が経っていない訳だが。


ぜいっぜいっぜいっ
理々が汗だくでへたり込みながら息を吐いている。


くるっと愛花が裕也の方を見た。

「やる?」

ぞわあぁっ
裕也は鳥肌が立った。


裕也「い、いやですぅっ!」

・・・
愛花「フェンリルナイトなんでしょ」
にじりよる愛花に、座ったままずりずり後ろに下がる裕也。




「あなたみたいなっ、、強い人に・・・」
青ざめる裕也。

愛花「・・・」

チャキンッ
剣を納める愛花。

ふぅ、と軽く息を付いて、
「あなたみたいに強い男は始めて見た」
と無表情で言った。

理々「え?」

裕也「え?」

さわっ・・・

風も「え?」と言っているように風が吹く。


愛花「自分の弱さを全面的に認められる男は、『真の男』だ。
プライドが無いのを自分で認められるのが『本当の男』」

・・・
理々「・・・」

くるっと愛花は理々の方に振り返った。

「いい男見つけたな」


パッと立つ理々。

「で、でもあの。藤波先生は私に負けるんですよ
本当にへにょへにょっていうか」

口から魂が出る裕也。

しばらく黙っていた愛花が言った。(説明した)

1、この世界は理々が主人公(ゆえに誰も理々を倒せない)
2、だが、愛花だけは理々でも倒せない
3、何故ならば

この世界は

『あなたのお母さんの頭脳を元に作られているからだ』

理々「・・・え?(汗)」


『あなたのお母さんの世界観、こうあればいいという世界、
先入観、色々。
それらのものが、プログラマーによって作られている』

エコーが掛かるような愛花の言葉。


・・・


裕也「(プログラマーって誰?)」


愛花「・・・誰かが世界を創造して、私たちがいる。
何階層もある中で、私が少し上の位置にいる。

少し下に位置するあなたは、『上の私』を倒せないんだ」


くるっと背を向ける愛花。

だから、裕也は本当はとても強い、のだということを説明した。
(上、の人間を認識出来るから)

裕也は腰を抜かした状態のまま呆然としていた。


むす~っとする理々。
「何よそれ。お母さんがどうしてそこに、、ママが何でいるワケ?
説明してよ!おかしいでしょ」

瞬きをして愛花は言う。
「あなたは母親。母親はあなた」

キンッ!

キキンッ!

ぐっと頭を両手で押さえる理々。

理々「うく・・・」

「同一人物。あなたが作ったこの世界はすなわち」


理々「いやあああぁぁっ!!」

理々の絶叫が響いた。



数十分後。


へたり込みながら理々は言った。

後ろではトントコトントン..と裕也が背中を軽く叩いていた。


うっ
理々「本当は、、お母さんなんていないの。全部・・・作りもの」


理々は裕也にしがみついて、泣いた。

うわぁぁあぁ!
ぜんぜい、うざいの分かってる。今だけ泣かせて!


裕也「(パン・オンライン。ここに君の全てが・・・まぁ大袈裟かな)」
いつの間にかすぅ、、と眠り始めている理々。

裕也「(来るべき時は来た。ずっと、君のお母さんのことは黙っていようと思ってた
でも、結果的には良かった。これからだよ。理々さん)」

まだ、「さん」が抜けない裕也であった。



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