小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」
手の内
何何処かの小奇麗な客室。
汗をかく麗海。
麗海「(み、妙に美男美女じゃないですか?)」
ひそひそ声だ。
鴻日「(妃羽さんはきっと何かが出ているんだろうか・・・
威俐様はともかく)」
テーブルの向こうには『魏 威俐』
向かいに座っているのは『白 妃羽』である。
(一応、妃羽は暘谷の苗字)
<しばしの睨み合い>
威俐「久し振りだな
暘谷とはどうだ」
はい、普通に 楽しいです。
とやっと答える妃羽。
しばしの説明―
「・・・そ、それで。ですから
暘谷さんは関係ないので、あの方を色々その。
へ、変な風にしないで欲しいっていうか」
たどたどしくも、一連のことを頑張って言う妃羽。
麗海が立ち上がって言った。
「私も賛成です。暘谷さんはこの件ではそれほど関係ないと思います。
色々考えがあってのことで。
い、いつかっ、威俐様と、暘谷さんと妃羽さんで話し合うべきではないかとっ」
クシュッ
緊張したからか、麗海がくしゃみをした。
鼻をハンカチで押さえながら、
「暘谷さんは頭の悪い方ではありません。
きっと、妃羽さんのことを良く知っています。
ちゃんと威俐様のことを好きなのだと理解してるはず・・・」
それ以上は言えない彼女。
「何を言ってるんだろう」
目を閉じ、何のことやら顔をする威俐。
威俐は、何を考えているのか分からない男だ。
鴻日も、麗海も、そして妃羽もそれをつくづく感じた。
「私はただ妃羽に戻って来て欲しいだけだ。
嫌がらせを受けたら暘谷は「帰して」くれる。―そう思ってね」
ストレートに、肘をつきながら目をつぶって言う威俐。
ぐっと妃羽は構えた。
・・・
カチャッ
3人の召し使いたちがやってきた。
(含愛衣)
「プーアル茶とジャスミン茶で御座います」
ハッと愛衣が妃羽の姿を捉えた。
去る時、ニコ、と笑顔で愛衣はドアを閉めて行った。
妃羽「(愛衣さん 心配掛けちゃったかな)」
・・・
「私が出来ることはありませんか?」
妃羽が言う。
シーン―・・・
少し空気が柔らかいゼリーのように固まった感覚がしてうつむく彼女。
・・・
『わ、悪いかよ
あの『森林』良いから・・・』
『なんで、、俺のパジャマ着てんの・・・』
暘谷とのやり取りを何となく思い出す妃羽。
汗をかく。
「(どうして。どうして?どうしてそこまで親しくないのに、
そんな時期に勝手にパジャマ着たの?私。
私そんな性格じゃないし。
そんなことする図々しさなんて・・・)」
一体何なんだろう。
妃羽はうーむ、と少し上を見ながら考えた。
「何もない」
そう言ってガタッ、と席を立つ威俐。
麗海が言った。
「何のための話し合いですか。
意味が分からないわ。
暘谷さんが。
そこまで暘谷さんが憎いのですか」
鴻日がそっと上品に、両手をテーブルに付けてから席を立つ。
「何か、事情があるんですよね。
―ね、威俐「さま」」
トゲのある言い方で冷たく言う鴻日。
?
?
固まる女性陣。
ハッとして、妃羽は威俐の背を見た。
すでにドアに向かっている彼。
「そこまで話さないってことは、話し合いに参加しないってことは。
答えはひとつですね。
・・・あなたのところに戻ります」
歩む足をピタッと止め、振り向かない威俐。
やっと少し振り向こうとする時
「暘谷のためだろう。
彼のためか?」
と彼は少し強めに言った。
「暘谷さんのためです。
だって、話し合いがあって、私が・・・引き取られたなら。
・・・そういう話を聞きました」
暘谷は全く悪いことをしていない。
むしろ妃羽に優しくしてくれた。
何故、そんなやり取りがあったのに、、
暘谷さんが冷遇されているのか・・・
そういうことを妃羽は言う。
「いいよ」
嘲笑するような、腹黒そうな声で、威俐が答えた。