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現代ファンタジー・創作小説



小さな世界 | 現代ファンタジー小説

小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」

杏露酒

対面の格好で、お互い下を向く威俐と妃羽。

いつもは優柔不断な妃羽が若干落ち着いて、言った。

妃羽「もの、のように思うのではなく、人間のように接して下さい。
あ、今の生意気な言い方ですが」

元に戻った際の、自分への接し方について妃羽は言った。


「・・・」
威俐は黙っている。

下の階の、ガシャガシャッ、という音が聞こえた。


ふたりとも、神経が過敏になっているように思われた。


麗海と鴻日だいぶ前に退室していた。

本当はちゃんと部屋があるのに、
4人で話していた時は、4人しかいないような感じがしたなと、
感じる妃羽。
周りの風景、物が全部消えてしまっているような感覚。

精神的なものだけがふよふよしているせいか、
妙な感じなのを強く感じた妃羽。


飲み物置き(コースターのようなもの)に、見事な彫刻があることに
今気づく妃羽。

これだけで(※日本円で)12万くらいするんだろうか。とか考えて
脱線していた。


ガタッ、と突然席を立ち、
「ちょっと待ってて」
と言って少し遠くに行く威俐。


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トクトクトク.....

「杏露酒(杏のお酒)。いいだろ」

お酒をグラスに注ぐ威俐。


キラッと左手の薬指の指輪が光った。
「(・・・私との?べ、別の人との?
な訳ないか)」

(形的にであれ)別れたくせに威俐を取られたら、と一瞬ビクッとなってしまう妃羽。


妃羽は詳しく言った。

1、愛情を感じない。片想いなのに変な感じ
2、もの、として扱われている


妃羽「ゲームのコントローラー・・・
或いは、、パソコンのマウス。
・・・そんな感じがします。
私は人間です」
強く訴える彼女。

だからこそ、好きだけど戻るのは恐い。


・・・
「そのうち分かるよ」
静かに言う威俐。

邸内に、ドビュッシーの『月の光』が流れた。


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良く分からないが、私には君が必要だ。
暘谷には迷惑掛けたな

静かな声で、まるで独り言のように言う威俐。
窓から見える夜の街が、深海の夜光虫たちの光のように見える妃羽。

「あの」
気付くと声を発している妃羽。

振り向く威俐に即座に言った。
「暘谷さんは?
暘谷さんは無事なんですよね?
大丈夫なんですよね」
外の冷たい夜光虫の光。
それを背にして威俐が無言になる。

「君は暘谷が好きか」


?妃羽は、真面目な質問をしているのに、
彼女にとっては冗談な質問を返されて頭が混乱した。

「んな訳、んな訳。んな訳ないじゃないですか!
意味分かんない」
妃羽は体の力が抜けた。


妃羽も含め、妃羽から後ろが、全部崩れて現実でないぐにゃぐにゃしているもののように見える威俐。
妃羽も、化粧をしてそれなりに美しかったのに、背伸びをしている中学生の女の子のように見えた。


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帰り道。

パシャッ
妃羽「(暘谷さん好きって・・・うえぇぇぇ(←失礼)
でも、変に仲良すぎるというか、おかしいよね?パジャマの件なんて特に)」

車のクラクション音が鳴る中、雨なので傘をさして帰る彼女。


白邸。

テクテクと白樺並木を歩きながら
「(もうすぐこの並木道を通らなくなるのか・・・)」
と思う妃羽。


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妃羽私室。

ベッドで横になる妃羽。
あまりにもごろごろ回るので、
ユウはベッドに乗り損ねていた。


『もののように扱わないで』ということを言った。

『そのうち分かるよ』
と何か含んだような言い方をした威俐様。

・・・
スピリチュアルだとかオカルトだとかそっちなのだろうか。
しつこく聞けば教えてくれるかな・・・

妃羽は欠伸をしながら考えていた。


「・・・」

トンッ
ユウが肉きゅうで妃羽の顔を触った。


「暘谷さんとこ行かね?」

ユウに振り向く妃羽。

「そうね」
少し明るく答える妃羽。



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