小さな世界 > 第4章「global」
約束!
清子の祖母は偏屈者で、親戚から離れて遠くの島で暮らしていた。
たまに清子が島に行き、祖母の家に遊びに行くが、
「また来とったんか」とすげない態度をされることが日常茶飯事であった。
良く聞く台詞。
『あたしが若い頃は全てがアレでさ。若くて元気良かった20歳の頃が台無しに。
人生ってのはお釈迦様も言ってるが『苦』だな。
あたしの人生いいこと何もありゃしない』
一番美しくて輝きたい時期に世間は大変な事件、時期を迎えていて
祖母はその『大切な時間』を壊されてしまったのだ。
残ったのは厄介者のおまえさんと、孫たち。
・・・厄介者は私か
そんな風に言って自分の親戚やらなんやらの『血族』たちをわざと厭な思いにさせて
あえて嫌われ者になっていった。
清子「自分の血が嫌いなの?」
その問いに何かを感じ、いつもちゃんと振り向くが答えようとしない祖母。
清子は何故か祖母に懐き、良くその島に行った。
好きだから、というよりは「自分の先祖?だから」という尊敬の念からかと思われる。
「料理も出来ないんかい!それでも女か!」
ビクッ
清子はいろいろと島へ行くたびに家事をやらされて鬼のような教育をされた。
すごいことを言っておきながら、祖母は家事はまるでダメで「自分のことを棚に上げている」を地で行くような人であった。
他人だったらトラウマレベルで「大っ嫌い!」になるだろう・・・。
祖母はキセルを吸いながら、ある夏の日の夜に言った。
「若くて元気いっぱいのうちがいいやね。うるさい年寄りになるといかん」
キセル吸ってるーっとしばし煙を見た後、清子が言った。
「そうそう。さっきおばあちゃんの写真見たんです。
知的そうで綺麗な女性でした」
ぐるんっ
祖母が勢い良く後ろを向いた。
祖母「見たんか?どこで?」
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祖母は掃除やら洗濯やら料理やら買い物やら略略をさせているため
『それ』が仇になった。
あるごちゃごちゃの本棚をきれいに整理整頓しろと言い・・・
更に『年代別に分けて!』と注文したのである。
本の一番後ろの「何年出版」というのをサッと見て揃えて、ということだった。
清子「すっごく大切な感じの皮のブックカバーで
目立ってたんです」
笑顔である。
祖母は優しくて、でも決して頼りないなどではなく芯はしっかりあって
しかし有りすぎて頑固という訳でもなく、
長い黒髪がとても美しい、女らしい人であった。
(※若い頃)
祖母は恥ずかしいという訳でもなく呆気に取られている訳でもなく
普通だった。
女らしい、というと凛々しさに欠けるイメージがあるが
凛々しくもあるのだ。
「バランスがあるんですねー」
清子が言う。
・・・
バランスの整った女性。それが清子の祖母であった。
ちなみに「均(きん)」という名前である。
(昔の女性の名前はテキトウに付けられた名前が多い?)
祖母「ほー・・・誰だこれ」
少しほんわかした空気が漂う。
ツツーッ.....
祖母が目から涙を流した。
清子「おじいさん?」
遠い話だよ。
あの助平じじいが。
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祖母『え?私ですか?』
祖父『うん』
そんな、変な格好してるかな・・・?と
自分の服装をキョロキョロ見る祖母。
祖父『うん、こっちおいで。きれいな服があるよ』
飾り立てられた祖母。
そして祖父はその様を見て言った。
失敬。
バランスの取れている人にきれいな装いは
かえって不恰好にさせるね
祖母の手を取って祖父は言った。
『元の、女中の姿に戻っておいで。待ってるね』
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もっと聞きたいのに途中で話をやめる祖母。
祖母は何処かの名家に勤める女中だったらしい。
籍を入れてさぁ祝言、というところで祖父は脳の血管が出血する病に見舞われ
亡くなってしまった。
・・・
『バランスが取れていて、宇宙を見てるみたいだよ』
祖父はいつも祖母にそんなキザ~な台詞を言い
祖母は「自信持たなきゃ!」と前向きに考えた。
清子は深く納得。
「だから、『バランス』に反応・・・」
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祖母「は?」
1、祖母と同じ若い女性(外も中も)を究極に幸せにする
2、幸せになれないかな?
清子の提案である。
・・・
「頭おかしいんじゃないのかい?」祖母は言った。
が、
「まぁ、幸せになれたら嬉しいねぇ」と小さく言った。
ざんっ
清子「え?」
島から帰る日。
清子「なぁにー。聞こえなーい大きな声で言ってー」
・・・
「約束!約束守れよ!」
清子「?!」
でかい声が出る祖母に驚く清子。
「約束!わしを幸せにするんだ!」
少し涙を浮かべて清子は手を振った。
「おっす!」


