小さな世界 > 第5章「知られざる」
一瞬だけ
え?
彩海「時間のバグが起こってる。D層の秘密管理人と、ここF層で会えないことに、、
なったわ」
ここはF層、パン・オンラインのヘーベル高原。
花宇の中身、「清子」はD層の愛花に会えるのを楽しみにしていた。
『神々の黄昏』という本に出てきた大好きなキャラだからである。
ナイトライド氏、イザムバード、アイリーン、
そしてウィリアム。
D層の様々な人々に会ってきて、
ここ、F層に降り立ち、D層の秘密管理人、愛花と会うことになっていた。
(※E、F層には秘密管理人が存在しない)
・・・
彩海「2年後、愛花さんはここにくることになっているわ。
普通に時間を合わせて、すぐにでも会わせることが出来るのに・・・はずなのに。
・・・時間のバグが起こった・・・」
時間のバグ。
層ごとに時間の概念が混沌としていて、層を出ると違う「時(とき)」に迷い込む。
それらを「主」が自由に操作するのだが―・・・
・・・
彩海「主、でもコントロールが出来なかった。
世界の法則が、あなたと愛花さんを会わせないでいるのね・・・」
ツツーッと涙を流す花宇。
「ぞっぞんなぁっ せっがく来たのに!」
・・・
汗がにじむ彩海。
高原に何故風が吹いて汗を乾かしてくれないの、と思う。
「(この・・・想いの深さが・・・愛情の深さを物語ってる・・・
そして愛花さんの、、生みの親だという、、)」
気付くと彩海も涙を流していた。
えっさえっさ
ごっちゃごっちゃ
「あーこれも。これも。あーこれ要らない」
箱に色んなものを入れる花宇を、後ろから見る彩海。
「あ、あのエンペリシャスの薬だけで・・・と思うわ(汗)」
ここは小さな木の家で、小さなキッチンとダイニングがある。
即席で彩海が買い、そこで作業している。
2年後に来るという愛花に、ハッピーバースデー!の箱をプレゼントということだ。
すぐにでも会いたいが、2年も待っていないといけないため、
愛花に会うのを諦めて、せめてエンペリシャスの薬を、、という訳だ。
くるっ
「え?」
「私の精神力も使うわ(汗)。疲れを取るのに日にちを擁するけど」
花宇「やって下さい!」
手を上げる花宇。
・・・
「想いを詰める」魔法だ。
何かのビンとか箱とかに、想いを詰める。
しかしそれが柔らかければすぐ漏れるし、大きな想いならそれ相応の硬い箱でなければいけない。
この世界でいっちばん硬い鉄箱を!
感情的すぎる声で言う花宇。
彩海「すごい重さね(汗)」
彩海は一番硬い「鉄箱」をアイテム屋で譲ってもらった。
店長「誰も使わないし、何かおまえさんとこ譲ったほーがいい気がしてな」
何かを感じたようであった。
・・・
・・・
こうして。
彩海の「想いを詰める魔法」で鉄箱に『清子』の想いが詰められることになった。
花宇「これでお別れですけど、、絶対、絶対私・・・」
会いに来ます、と言おうとして止める花宇。
D層秘密管理人と会わないと『糸』との役割が果たせないが、
「ナイトライドさんを秘密管理人にするわ」
と彩海。
ナイトライドさん・・・あの学者?さんか。
あれ?聖職者の服を着ていたような?
何でもあり?
考え込む花宇。
彩海「まずG層、、大事なところよ。そこに行って、糸を通したら
次にD層。
それで終わり」
ビクッ
寒気がする花宇。
G層の名を聞いてずっしり体が重くなる感覚。
様々な設定で、自分ではない自分として本格的に新たな世界に行く予感。
役目の大きさ大変さに青くなっていく花宇である。
チリン....
彩海「これで、・・・諭弦さんを呼び出せるわ」
キラキラと輝くベル。
5回鳴らせば、すぐに飛んでくる。と笑って彩海が言った。
諭弦『何かあれば、いつでも何処でもあなたをお助けに参ります。
わたくしを、いつでも頼って下さい』
あの時の言葉を思い出す。
頭を左右に振り。
うっし、とガッツポーズを取る花宇。