短編集Tanpenshu
悠久を織るWeaving eternity
- 第6話:同じ
NEW!が出ていると飛びつく夫と、
NEW!もARCHIVEも興味ない妻。
新しきが大好きな旦那と
古きも新しきもどうでもいい奥さん。
そして旦那の方はあやしい超能力を持っている。
・・・
子も出来、孫も出来、
「もうすぐ、、あと3年で還暦ねっ」
旦那の名前は『悠悟』
奥さんの名前は『彩織』
蛍が飛び交い、花火が鳴って。
鈴虫が鳴く。
結婚したのも夏。
色んな想い出も夏。
夏が特別だった。
パーン!
花火が鳴る。
彩織「あの夏を思い出すわね」
悠(ゆう)、ふたりの子供だが。
結婚相手を連れてきた、、それも、夏だった。
悠は頭の良い子であった。
Intelligence(知性)の方である。
Mentality(精神)の方は分からない。
彩織「(でも、悠悟に似て精神性も高そうね)」
ガチャッ
あっ
彩織は玄関に小走りで向かった。
彩織「おかえりっ」
パサッ
サーッと青くなる彩織。
テーブルに出された悠の公文式(くもんしき)の答案。
彩織「・・・これって。高校数学のいっこ上じゃない!」
悠はお肉たっぷりのシチューを食べている。
彩織「・・・・・・」
公文はその子が問題を解ければ、その上の学年の問題だのを天井知らずにどんどん学ぶことを出来る。
悠は彩織が苦手であった。
可愛がってくれるのだが、叱ってくれない。
どう接していいのか分からないのだ。
父親にそれとなく相談をしたが、「何とかなるよ」しか言わない。
何ともならないから父親(悠悟)に相談していると言うのに・・・。
父親も母親も当てにならないので、悠がしっかりしていった。とも言える。
教室。
担任と彩織。
「ええっ!?」
担任「あの子は頭が良すぎるので海外に行くか、家庭教師を付けて・・・
いや、もう大学に入った方がいい。日本はそういうのは全然発達しておりません。
海外なら別です。
どこか留学させた方がいい」
数年経って帰国。連れてきたのが「真織」であった。
せっかちに英語を学んでせっかちに大学を卒業して
せっかちに就職して、
せっかちに「20歳になったから」と結婚相手と結婚しようとした。
ししおどしがカッコーン、、と鳴る中。
悠悟、彩織、悠、真織が
立派なちゃぶ台に座っている時、
ガタッ
真織「聞いて下さい!」
悠の結婚相手が立ち上がって言った。
悠と真織は二歳差である。
真織が16歳になった時に「結婚出来るから籍でもいれよう」と床屋に行く感覚で籍を入れようとした。
(しかも真織の誕生日の日)
真織が「まだ、、少し早いから。20歳になったら結婚したい」と言ったら
別れよう
と言って別れようとした。
(誰かに似てる)
仕方ないから「悠が20歳になったら(真織、ではない)」に妥協して結婚することになった。
・・・と。
何とも言えない空気が漂った。
彩織「・・・妥協してくれる分いいわよ。
悠悟なんてきっと、、」
悠悟「いやっ、あのな・・・」
彩織「本当に十六の時点で結婚しないととんでもないことになってたわね。
私の場合・・・」
自分からプロポーズする点と、何とか相手の要求を飲んで結婚を数年待つ、、という点では父親よりマシだと言える。
彩織はどんな女性を連れてこようが「悠が間違った相手を連れてくる訳がない」と
100%信じていたので、
「おめでとう~」と満面の笑顔で迎えた。
身辺調査も全然しないし、どういう人間かも全く気にしようとしなかった。
(それもどうかと思うが・・・)
悠悟は「どう生きようがその人(我が子という感覚がない)の自由だから」と
あんまり気にしなかった。
おめでとう。静かな笑顔でふたりを祝福した。
薄紫色の着物を着る彩織と、
薄紫色の着物を着る悠悟。
ペアルック。
彩織「遠い夏の思い出ね」
悠悟「 」
ふたりで縁側でやはり花火を見ている。
・・・
彩織「あの時、変なこと言って悪かったわ。
もう昔の話だけど」
パーン
ドドーン
ドパパーン
パーン
ドドーン!!
(悠悟の心の叫びのような音)
彩織「悪かったわよ!
言い過ぎたわ。
お菓子でも食べましょうか」
奥に引っ込んで
水ようかん(と多分緑茶)を持ってくるであろう彩織。
悠悟は立ち上がり、
庭をテクテク歩いて
超能力でヘンにしてやろうかと思ったが。
やめた。
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