短編集Tanpenshu
悠久を織るWeaving eternity
- 第8話:グルアとティアナ
バタッ
照りつける太陽に我慢が出来なくなって倒れる彩織。
グルア(狛犬・オス)が走ってきた。
「中宮(ちゅうぐう)様、大丈夫ですか」
彩織「大丈夫よ。はぁ。何なのよもう。リゾートってもっと楽しいもんじゃないの?
あづぅ~ぅ・・・」
悠悟が約束したのである。
彩織の誕生日に四次元の世界を使って、
「ハワイ→グアム→フィジー→タヒチ→モルディブ→パラオ→サイパン」
回りをすることを。
「行く前はあ~んなに張り切ってたのに。
いざ来たらこんなに疲れるなんて」
彩織はフラフラになりながらヤシの樹らしきところに行き、座ってひと休みをする。
この話は「第二話:ネコ」の時のものなので、相当~昔の話・・・ということになる。
彩織「何で悠悟は来ないのよっ」
傍に置いてあったオレンジ色のトロピカルジュースを飲みながらブーたれる彩織。
ティアナ(狛犬・メス)は言った。
「悠悟様、、御上(おかみ)はあなたがとてもトロいから一緒に行きたくないと言っていました」
グルアはすぐさま訂正した。
「中宮様、誤解です。 悠悟様、、御上はご自分の足の早さをとても危惧されておりまして
中宮様が快適に観光地を回ることが出来ますよう、ご配慮なされたのです」
ティアナ「なによ、グルアったら。ちょっと敬語覚えたからって。
かぁーっこつけちゃってさ。フンッ」
ティアナ。
「口が悪いですよ。品格が落ちると何度申し上げれば良いのです」
ティアナ「あと13回くらいかな」
エステもして、プールも泳いで。
美味しい食べ物も食べた。
後は悠悟をいじるしかないじゃないの!
ストレスがたまる彩織。
?
気付くとグルアとティアナが彩織のエステをしている。
かなり気持ちが良い。
「え?」
さっきエステたくさん味わってきたわ。
もうしなくてもm、、
フサフサの犬の毛がかなり心地良い。
ま、まぁ
彩織「こういうのも、、悪くないわね」
目をつぶる。
狛犬エステです。
いかがでしょうか。中宮様。
グルアが丁寧に声を掛ける。
あ、そういえば。
「中宮様、って何?」
聞く彩織。
や~だ、そんなのも知らないなんてっ!
ティアナが器用に腕を組んで言う。
「御上」がトゥエンノウ。トゥエン・・・トゥエン・・・。
「中宮」がコウギョグ、、コウギョヴ、、コウゴウ。コウゴウ!
ティアナ「言えた!」
神聖な言葉ゆえ、わたくしたちは「発音」出来ないのです。中宮様
グルアが優しく解説した。
テンノウ、コウゴウ?
彩織が思っていると、
グルア「ティアナの先程からの非礼、どうぞお許し下さい。
彼女は普段は聡明で素敵な女性(女性?)なのです。
悠悟様、、御上のことになると変わってしまって・・・」
っていうか。
あたし「コウゴウ(発音合わせた)」なんて存在じゃあないわ。
中宮って言われても困るわよっ!
起き上がる彩織にグルアが言った。
悠悟様が「御上」なのです。ですので、そのお妃である貴女は必然的に「中宮」になる訳です。
彩織「ふぅん」
気付けば・・・
もう、夕方。
いや、夕闇の刻になっていた。
?
グルアとティアナの体が光っているように見える。
ねぇ
「人間に変身て出来るの?
狛犬になったんでしょ?」
グルア「出来ますよ」
赤紫から桃色に広がる美しい振袖。
青紫から空色に広がる凛々しい羽織袴。
彩織「・・・・・・」
今、ふたり(グルアとティアナ)は遠くに行って夜の海を見ている。
ぼーっ
・・・
大和(やまと)の神々、、、ってやつなのかな。
・・・
・・・どうでもいいわよ。・・・
・・・
悠悟ってあーゆうのを従えさせてるんだ。
「(御上とまで言われて)」
ネコ忍者をドンドコ回してハープ弾いてたのに・・・
(第二話:ネコ参照)
「ありとあらゆる苦痛」なんて文字浮かび上がらせちゃう寂しん坊が・・・
(第三話:いつまでも参照)
・・・
私への誕生日プレゼントって、
「グルアとティアナを従者にする権利」だったりして。
立ち上がる。
走る。
いなくならないで。
いなくならないで。
駄目。
悠悟の元に帰らないで。
あっ!
・・・
信じられない程びっしょり汗をかいてベッドから起きる彩織。
普通に。
何事も無かったかのように、悠悟と戯れるグルアとティアナ。
ムッとしながらも
まぁいいわ。楽しかったわ。程ほどにね。
強がりを心の中で言う彩織。
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