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目次 >> RO物語本編 >> 夜桜の精夜桜の精Spirit of cherry blossoms at night
- 第10話:ヴィンセント
彼の名はヴィンセントと言った。
若かりし頃、彼はまだ男前であった。
カツンカツン
灰色の、冷たい床。
道路をそんな風に思ったのはいつの頃からだろう。
「(土の上を歩く方が好きなんだ)」
森林の所の木の葉の上をサクサクッ とかね
川が流れている両脇の草の上をテクテク とかね
幼いヴィンセントは言う。
『お母さん』
母親はそれをさえぎった。
「いやね、やめて頂戴。
私、「ママ」って呼ばれたいの
お母さん、っていかにも老けてる感じがするじゃない」
…
母親は続ける。
だからね、「ママ」って呼んで。
ずっとよ
…
きっと絵に描いたら恐ろしく面倒臭そうな、
豪華な豪華な家。
わさわさ動き回っているお手伝いさんたち。
ひとつでいいのに、あちこちに飾ってある色んな風景とか人物の、絵。
「(額縁の分減らしたら少し壁スッキリするのに)」
優しい顔をした、茶色い髪の清楚そうな母親。
表向きはそう装っているのに、
「(実際は悪魔なのを知っている。それも恐ろしく邪悪な)」
この家がそうなように。
きらびやかなのは表面上だけで、内面は...。
俺は、外見と内面が直結していないことを知っている。
外見ヅラには絶対に騙されない。
ヴィンセントは心の中でつぶやく。
・・・様々な期待。
両親により、
強制的にクルセイダー系職にさせられ、王宮警備の部署に配属させられた彼。
(※クルセイダー=剣士の発展職、警護兵)
そんなもの、自分で稼いで努力して手に入れたいのに、
どんどん豪華な武器・防具を頼みもしないのに買い与えてくる両親。
「父さん、これじゃあ僕はどんどん駄目になっていく!」
「何。それじゃ不満か」
違う
でもそうだ
母さんも。
でも買い与えられたら、、
それが当然になって 当たり前になって
俺は きっと・・・
リヒタルゼン(企業都市)の、とあるどこかの大富豪の家。
冷たい心を持ったある人間。
名はヴィンセント。
彼はいつの間にか、どうしようもない人間になってしまった。
普通は甘やかされた人間は、財産を食い潰す。
聡明なヴィンセントは、元々あった財産を、更にふくらませていった。