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洞天



やっぱり押さえきれない。

押さえきれる訳ない!


しくしくしくしく

布を顔にあて、耐え切れないように泣く美織。


事情を知っている(見抜いている)喬一は、

その光景を静かに少し、、戸惑いながらも 見守っていた。


な、なんで


「なんでもう「洞天」なのよ

・・・分かってたことだけど」


先日、喬一は「太陰仙人」という仙人の一番下の位から、

一歩上の「洞天仙人」というものに昇格した。


しくしくしくしく


美織は最初は「おめでとー!」などと笑って言っていたのだが、

あまりのショックに雲の机にドシッ!とぶつかり、、


だいじょうぶ?と慌てて 手を差し伸べる喬一を見て、、

そのままへたり込んでしまったのだ。


そのまま、、

呆けた顔をしていたのだが、

我慢出来ずに とうとう泣き出してしまったのだ。


喬一は事情を知っていたが、
(何故こんな風になってしまうのか。過去参照)


あえて「どうかしたのですか」

と聞いてみた。



美織は「喬一さんが離れていくなんてやだもん!」

と涙声で言った。


どうやら飛躍しすぎているようだ。


今はどんな言葉も聞きそうにないな

喬一はうーん、、と考え込んだ。


喬一「どういう意味なのだろう」


だって、、


だって




美織はずっと布に顔を当てたまま、沈黙しっぱなしだ。


美織「(面倒臭いなーってこのまま喬一さんが去って行って欲しい)」


そうすれば、もっとみっともなく泣ける。



喬一は言った。


「僕の出世とどう関係するのでしょうか」


美織がパッと顔を上げた。


「離れたくないの・・・」


ぎょっとする喬一。


しょぼーんとしながら続ける。


「ずっと傍にいてよ」



頼む。


もっと分かりやすく言ってくれ。

知らない振りしにくいじゃないか


一体どういうことだろう、などと言っていたら時間がもったいない。


うーん

諦めよう



「ならないです」


え? と美織が顔を上げる。


じーっと見詰め合う。



美織「(あ、そうか・・・)」


バレてるのね。

やだ。

どうしよう・・・


美織はキッと睨んだ。

もーバレてるならどうでもいいや


なっちゃうもん!


あたしから離れたらどうなるか分かってんの


「あーやだやだ!!天帝に頼んで降格処分、、太陰仙人に」

「やめてください!」


「いやよ!」


夫婦じゃないが、犬も食わなそうな会話が飛び交った。



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