しとしと。
メイフィールド家。
アレクシスの家。
ジュノー(シュバルツバルド共和国の首都)に
書類を取りに、明日は早くから発たないといけない。
アレクシス「ふぅ」
ワイアット「兄さん、父さんが呼んでるよ」
一番下の弟が呼んでいる。
もうそりゃすっごいどしゃぶりなのに・・・
その中で話そうとする父。
アレクシス「父上、屋内で話しませんか。
風邪をひいてしまいます」
父親は濡れた体で振り向いた。
「ヤオ・メイチーはやめておけ」
・・・
父親「あの女は何か巨大な悪を抱えている。
おまえは破滅だ」
・・・
本当にこれは風邪ひくという感じの雨は降り続けている。
あの女は巨大な混沌だ。
「誰もが吸い込まれ、破滅・・・待っているのは・・・」
屋内。
『だが。・・・恐らくおまえたちは一緒になる。
取り込まれないようにしろ。それだけだ』
父親の先程の哀しげな声。
アレクシス『私は妻を取りません。面倒なだけです。
メイチーは友人です』
父親『俺には分かる・・・
おまえでさえも・・・
いや。おまえなら或いは』
何を言っているのか分からない父親に「(少し疲れてしまっているとか)」と考えるアレクシス。
アレク。
『何があっても。自分を見失うな。
あの女に負けたらおまえを・・・』
何故、そこまで、、と思うアレクシス。
『(何かに負けたら「父としておまえを成敗する」ということか)』
『またよ。依存されやすいのね』
ふと思い出した彼女の台詞。
しとしとしと。
『危険人物A~F』
明日ジュノーの大図書館で探してくる書類のリストである。
この時期に新しいものが配布されるため、各街がジュノーに行って取ってくるのだ。
危険人物はAからFまで分類されており、
Aに近ければ近いほど危険度が増す。
A判定は『国家が滅びるレベルを超え』る。
何となく。
「(見たくない)」と思うアレクシス。
A判定者やB判定者などは自身の危険度を知らず、
そのままブリンガー(内に秘めるだけで表に出ない状態)としての一生を過ごすパターンばかりである。
A判定者やB判定者は全くいなく、(十何年かにひとり出るレベル)
通常の「レベルの高い危険人物」はC判定者である。
C判定者が見つかった瞬間、「本当か???」と館内の人間たち全員がやってくる騒ぎになる。
『危険人物』というのは悪い意味もあれば、
神聖な意味もある。
その人物に悪事を働けば悪いことが起こるという意味での『危険人物』という訳だ。
しかしそういう人間はめったにいない。
『ひゃっほう!』
ノリーンがwis(1:1対話)をアレクシスに飛ばしてきた。
アレク~元気ぃぃ?
いつもの彼女の声。
ノリーンは『シャーマン』という職業に就いている。
一般の冒険者の職業とは違う、極めて特殊な職業だ。
シャーマンとは、祈祷したり神託をしたりなど霊的な要素の深い職業である。
(しばしのおしゃべり)
『えー?私、男の人な気がするよ?A判定』
アレクシス『・・・え』
というか、いるのか?A判定が。
うーん
『徳が高そうに見えて、、実際高いんだろうけど。業も背負ってるわよ~
重いわねっ』
・・・
メイチーのことを訊くアレクシス。
『レンレンさんレベルぐらいならすぐ分かるんだけど。
なーにも感じないからF判定すら行ってないんじゃない?』
レンレンは紛れもなく『A判定』だ。
しかし彼女は大陸中にその存在やら力を知られており、危険人物というか
「名物的存在」として普通にも認識されている。
アレクシス「(父上の勘違いか?シャーマンのノリーンがこう言うのだし・・・)」
混乱するアレクシス。
『アレク?大丈夫?
とにかく、その「A判定」の男に気を付けることね。
一見優しそうで穏やかよ。
一筋縄じゃいかないわね~』
楽しんでいるように思えるノリーンが少しの癒しになるアレクシス。
暗い気持ちになっていたので・・・。
『恐らくおまえたちは一緒になる。