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限界が



ティルルは良家の令嬢であった。
(あれでも・・・)

元の世界の話である。

お嬢さん学校に通っていた訳だが、、必然的に。

そこで、頭脳プレーな「あれ」があった。

集団でひとりの人間を攻撃するという「あれ」である。

頭の悪い人間は肉体的に攻撃するが、
頭の良い人間は精神的に追い込む。

ティルルの通っていた学校では、「それ」は頭脳プレーで行われていた。


ティルルはイライラしていた。

被害に遭う弱い子にも、加害を加える人間にも。

加害に加わる取り巻きたちにも。


「そんな目に遭うような弱い人間も、弱い者を攻撃するしかない莫迦もお互い消滅すればいいわ」

冷めた目で見ていた。


或る時、

被害に遭った子が目に涙をいっぱいにためて机の上で呆けていた。

ずっと呆けていたので初めは他の生徒たちは「?」と疑問に思って近寄りチラチラッと見たのだが、

机に何か壊されたお守り??だか何かがあるだけだった。

ずっと立ってるなんてまるで見せ付けるみたいで「こんなに私傷ついているのよアピール」しているみたいで皆がしら~っとした目で見ていた。


当然ティルルもそういう目で見ていた。

「(そんなことしたって加害者がどうかしてくれる訳ないでしょ。もっと合理的に物事考えなさいよ)」

イライラしてそう思っていた。


そうしていたら、

その子がひとこと「・・・お父さんにもらった・・・お守りだったのに」と言った。

その子は父親を幼い頃に失っていた。


ツカツカツカ!!


ものすごい顔をしながらその瞬間ティルルが加害者の女の子の元に行った。

しばしギロッと見つめ(数秒)

バシッ!!

教室どころかその階全てに響き渡るような音が生まれた。
その空間に。


取り巻きの女の子たちがダダダッと向かって行ったが、ティルルの1M以内以上には近寄れなかった。


加害者の女の子は座っていた状態から、横の壁にぶつかった訳だが、、

(ものすごくふっとんでいった)

叩かれた頬を押さえ、しばし呆けた後、「何すんだよ!」と言った。

(普段はお上品に「何するの?」と言う)

そして近くの生徒の机にあった教科書をティルルにぶつけた。

ティルルの眉間に本が当たり、ティルルの眉間から血が出た。


ティルルはツカツカ歩いて行って、

「雑草の分際で」

と言った。

女生徒はとにかく近くの教科書や辞書(じ、辞書?)をティルルにぶつけまくった。

・・・が

ぶつけるのをやめて、カクッと座り込んでしまった。


ふふっ

ティルルは散らばった教科書の中で、その女生徒の名前が書いてある教科書(何故かあったらしい)を片足でグリグリ踏みつけながら

腕を組んで

「気持ち悪いわね、うふふふ」

と愉快そうに笑った。


笑っているのに、ティルルの額あたりはとても青黒くなっていた。


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あなたは本当に女なの?

震えながら、ひとりの女生徒がティルルに聞いた。


「胸あるし。これでも。

スカート履いてるし。

ここ(女子が通う学校)通ってるし
そら~女でしょ

まぁ遺伝子上はね」

脚を組んでお弁当(豪華なもの。仕出し弁当)をむしゃむしゃ食べるティルル。


チラッ

「あれ」の被害女生徒は普通にひとりでご飯を食べている。


ガタッ

(略)


屋上だ。

すっごくみっともない座り方をするティルル。

「たまたま私がパパとママに構ってもらえないからだったけど
アナタも自分の身くらい、自分で守りなさいよ」

女生徒「・・・汗」

ティルル「パパのお守り壊されたら普通はあーするでしょ?」

女生徒「・・・どうだろう汗」

ティルル「何でアタシみたいな大木があーいうきったない雑草相手しなきゃなんないのよ」




加害者女生徒は、そのまま登校拒否をしていつの間にか学校からいなくなっていった。



ある日、下校の時に見覚えがある後ろ姿を見つけたティルル。

「ヨウちゃん!」


くるっと振り向く、くるくるメガネの男子生徒。


「なにヨウちゃん。また歩きながら勉強してんの?」

笑いながら近付く。


「受験が近いですからな」

っていうかお久し振りですな


「久し振り。あはは。うちは受験ないからラクよ。
エスカレーターだからっ!」

「でしたな」


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と。言う訳よ。

「なるほど」

でも別に「メイチーさんほどじゃ ないでしょ」

ヨウ「それは そうですな」

ティルル「だから~・・・」

ヨウ「しかしまぁ 格好良いですが。万一というものがありますから。
お怪我が無くて何よりです」

ティルル「怪我したわよ。顔にね」

ピッ!と眉間の傷を見せるティルル。

ヨウは取り乱さず「あまり無理をなさらず・・・」
と言った。

「莫迦は相手にしてらんないわ。でも気付いたらやっちゃうのよ
しょーがないわね」


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すすき野原で呆けながら、

想い出に浸るティルル。

「限界があるのよね」

そっと言うティルル。


本当は人間は強い存在だ。

でも、無力なのだ。
限界がある。

優しい風を感じながら、マクシミリアンとティルルはずっと目をつぶって座っていた。
これが、現実なのである。


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