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第4章:葦原中国での話

第2話:運命

新解釈の古事記


オオゲツヒメ「何でなんでしょうね~。
お父様から受けた呪いとか?」

大宜都比売神 おおげつひめのかみ(愛称:オオゲツヒメ)。
なつさんとはるさんの子で、食物の神である。

妻を失って悲しむあまり、深い悲しみを背負ってしまい
黄泉の国にまで行き。
その妻と中途半端に会って、恋しさが増し・・・

愛する、その妻との間に生まれたのが三貴神。
スサノオは、その『父親の想い』を全部浴びてしまったのではないか?

「有り得ない話じゃないですね」
オオゲツヒメのふるう料理を食べながらスサノオは神妙に聞い(た振りをし)ていた。



食べ物を分けてもらおうと、根の国に行くまでに
たくさんの民家を訪ねたのだが、
高天原での様々ないきさつを知っている人間たちは、スサノオを拒んだ。

この頃の人間たちは神々を絶対崇拝していたので、
天上で色々あった、やらかした、というのは『ムリ、絶対』になってしまうのだ。

『弟のスサノオが困ってる!』
と、急いでオオゲツヒメが自分の社(やしろ)に連れて行った。


ご馳走をふるまいながら、黄泉の国に行くほどに、何故そこまで
母親が恋しいのか・・・を考察するオオゲツヒメ。

弟とはいえ、自分を、いや他の神々を遥かに凌駕するほどの力を持つ(人間には分からないのかもしれない)
スサノオ。

個人の問題だからどうかと思うが、
こんな逸材を根の国に送るとか、そういう前に
「(話を聞いておきたい)」
と最善を尽くそうと思うオオゲツヒメであった。


「おかわり!」
普通だったら三分の一も食べ切れないだろうご馳走を、
あっという間に全部食べてしまったスサノオ。

「(あーっ、つ、作り直さなきゃ。
作り足す、か。
おかわりとか全然想定していなかったよーっ)」
泣きそうなオオゲツヒメ。

おかわりを作るから、
お湯もあるし、刃物もあるし、危ないから絶対厨房へは入らないように、と注意して
オオゲツヒメは厨房へ入って行った。

待っている間、スサノオは先程のオオゲツヒメの言葉を思い返していた。
きっと、彼女の言う通りなんだろうけど、
でも母を恋しいと思う気持ちは止まらないし、原因を探ってみたところで、それが現在の気持ちを変えるとか
影響を及ぼすとか、そういうのはないなぁ。と気楽に思う彼。
完全に開き直っていた。

こういう、スサノオの、「母への想いの強さ」も
全てなつさんの「はるさんへの想いの強さ」から来るものであるとすれば、
かなり凄いものを一心に、受けてしまった、、結果なのであろう。

あの日高天原の機織り場で、
父親と母親の、寄り添う画像が頭の中に出て来た。

愛し合うふたりはとても言葉にならないものを、かもし出していて、
子を作るのに「愛」が必要な彼らは、
一人前だと認めてもらいたいために子を作ろうとしていた自分を、深く恥じさせた。
(スサノオの名誉のために注釈しておくが、その場ですぐに子を、という訳ではない)

自分の、母を求める気持ちがいかに幼稚で、
父親の、母に対する気持ちがいかに素晴らしいものか、というのが分かり、
吹っ切れたのだ。

・・・訳がなかった。
結局、抗えない、母への気持ちがあり(あやしいものではない)どうしてもそれが根付いてしまっていて、
どうしようもないため、自分のしたいようにすることが、
「自分のためにも周りのためにも」いいのだろう、と思った。

折角、海の統治を任されたのに、責任放棄して何という親不孝(そして神としても)な息子だろう。
とスサノオは深く落ち込んだ。
・・・が、スサノオは9:8の精神と肉体の配分がある分、力が強すぎるため、
中途半端に治めては、国にとても迷惑が掛かると思い、こういう選択をした。

父親の影響がない、荒ぶる神・・・でなければ
どんなにか良かっただろう。

海は素晴らしく統治されていたであろうに。
日本が台風や津波に悩まされるのは、
7:3であるから、というのもあるが、
スサノオが治めていないから、なのかもしれない。

彼がいたら、海は静かに統治されていたであろう・・・


「(それにしてもお腹すいた)」

とスサノオは思った。


第4章:葦原中国での話「第2話:運命」


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