神代の頃は(何を以ってして、ここからここまでを神代、と呼ぶかは分からないが)
天上も地上も地下も、世界中どこも「気」つまり空気が神聖すぎて、
少し汚れとか汚いものが集まって、何かの条件が重なる不運に見舞われると、
『荒ぶる神』というものが発生してしまう。
だから、「穢れ」というものは嫌われていた。
特にあの国は(略)なため、ことさら嫌われていたし、厭われざるを得なかった。
空気が神聖なので、力が現代と比べ、途方もなく強いのだ。(空気が)
まだ、例えば平安時代とか江戸時代だとかは、神聖な空気の先っぽくらいはあったので、
やはり穢れがあれば『荒ぶる神』、、つまり『妖怪』が生まれていた。
現在は空気の神聖さが無くなり、荒ぶる神やら妖怪やらの、
「誰も悪くないのに自然発生する怖い化け物」
が生まれない。
「そんなこと言うんですか?
何てこと。
ひどすぎます。
あなたなんてっ・・・」
とある、とても簡素に出来た小屋で、
ミカヅチの家来がアマテラスに向かって叫んでいた。
地上に降り、さらわれて三年間辛い・・・経験を。労働という苦しい思いをしてきた方たちを
癒す任務を、当分命じる。
家来は、命じられた内容を思い出し、涙をこらえながら言う。
「ご主人がどんなに苦しむか・・・」
彼は暑苦しいくらいに主人思いだった。
あまりに気の毒なので、私も連れて行ってくれ、と懇願するも、
駄目です、と凛として言われる彼。
「ミカヅチがしたことは重罪。
許せません」
周りのお付きの女性たちがざわめく。
小屋はふさふさしていて、少し不思議な小屋だ。
ミカヅチは剣の破片が、自分の注意力不足で、下の国へ行ってしまったことを
アマテラスに報告した。
天上のものが落ちれば、危険な事態に地上がなる可能性がある。
数年前のことである。
急いで大量の神々に探させたが、どこにも破片はなく見つからなかった。
一年はずっと見つけていたのに・・・
そして、スサノオに剣を献上された時に、
数秒固まり、これだ......と安堵し、且つ色んな思いが頭を巡ったのだ。
やっと見つかった、と泣きたかったアマテラス。
葦原中国は自分が治めなければいけない土地だ。
高天原も治めているが。
良かった、と心から安堵し、・・・そして破片が元で(略)な怪物を生み出すことになった
(悪気はないけど)のミカヅチに、秩序を守るためにも、厳罰を与えなければならなかった。
「地上に降り、さらわれて三年間辛い・・・経験を。労働という苦しい思いをしてきた方たちを
癒す任務を、当分命じる」
葦原中国は、高天原に比べて穢れが多く、
現代の感覚で言うと「空気の綺麗なところでずっと過ごしてきたのに、アスベストの被害が
頻繁に巻き起こっている工業地帯に引っ越す」(大袈裟ではなく)
ものだ。
地上は危ない。
とても穢れているし、危ない。
空気の神聖さは高天原の方が上なのに、荒ぶる神はほぼ現れない・・・のに対し、
葦原中国ではちょこちょこ生まれている。
そんな穢れたところ、と家来は必死に訴え、
そもそもあなたは葦原中国の出身のくせに!などという大層な暴言まで言う始末だった。
仕方ない
「俺が悪いんだ。何とかしたい
女性たちはもっともっと辛かった」
ミカヅチは、女性たちが汚されたり、・・・色々なくて良かったと言った。
家来は最後まで大泣きし、ミカヅチは家来に名前を与え、そして葦原中国に降りて行った。