え?え?
さすがの神武天皇もすごく驚いた。
目の前の神は、神武天皇が落ち着くのを待っているようである。
「あな、あな、あなt・・・?」
しばらくして、その神が、箱を持っていることに気付いた神武天皇。
「(そ、その箱に何が)」
少し落ち着いたようである。
箱のふたを開け、神は丁寧に、箱の中のものを・・・
本当に丁寧に取り出した。
それは、白基調の本・・・絵本?だった。
神はその本を左手で持ち、「これに、見覚えは?」と言った。
「ああっ!」
全然思い出せなくて、記憶の網を引き揚げていた彼だったが、
ようやく思い出した。
「アマテラス様の・・・」
「そして、あなたのことも覚えている。
・・・たしか、姉は急ぎすぎてしまったようですね、って。言ってました」
神は微笑み、「覚えていてくれたのですね」と言った。
絵本をもらった晩、女性か男性か分からない綺麗な神様に、夢うつつの中、
絵本を回収されたのだ。
絶対にこの絵本のことは誰にも言っちゃいけないよ。
絶対にね・・・
この優しい、催眠術?のような声で「絶対言っちゃいけない」という封印が見事付けられていたのだ。
神様は帰った。
絵本を読みながら、神武天皇は何とも言えない表情でその文字や絵を見つめていた。
すぐに絵本を、箱にしまい。
目をつぶって
大事にしよう・・・
と深く思った。
ここに置いておけば誰にも発見されない、という場所も神様から教えられた。
ちなみに、そこから数か月後あたりに、森の中でヨリヒメと三種の神器の話をするに至る。
神様『そこには『真実』が隠れている。
いつか、何代後かの天皇が・・・
その謎を。真実を。
解くことを祈っています』
謎?
『○○はいつでも、あなたを見守っていますからね。
愛しい○・・・』
前に聞いた、謎の言葉。
何故こんな時に・・・
フリーズする神武天皇。
数十年経ち・・・
「イワちゃん、じゃなくて天皇(すめらみこと)」
益々、顔の怖さに磨きが掛かっている神武天皇と、愛らしい容貌のままのヨリヒメ。
ふたりで、崖の上から、かつてふたりが良く森林浴をしていた山を見下ろす。
頭上で鳥が鳴き、
そして前へ進めと、急かした。
ヨリヒメはさっさときびすを返し、後ろに行ってしまった。
それを神武天皇は見守っていた。
進めなかった。
太陽があまりにも眩しくて。
不思議な感じがして。