アマテラスは号泣した。
すでに恵比寿は去っている。
誰にも弱音を吐けなかった最高神。
しかし、兄・・・長兄がいたから甘えられた。
弱音を吐けた。
けど
「(甘えちゃいけない、って言われた)」
―甘えちゃいけない!
アマテラスは固く誓った。
長兄という存在が、それほど大きなものだったのだろう。
最高神でさえ頼ってしまう「長兄」という存在。
日本人が長兄を頼るのは、この時から始まっているのかもしれない。
アマテラスは、「巣実於部屋(すみおべや)」と言う三貴神だけの部屋を作ろう、と思った。
「(そこで色々と地上へ向かうべき素晴らしい神様(存在?)を作るための相談をしよう)」
土の中のような、或いは周りが全部なめらかな曲線のようになっている木で出来ているのか―
岩のようなもののようなものにも思える。
どんな材質で作られているの?というような個性的な部屋―それが巣実於部屋であった。
ちなみに―
「巣」・・・アマテラス
「実」・・・ツクヨミ
「於」・・・スサノオ
太陽の神殿のとある壁をそっと、三貴神が押すと
ぶわっとその部屋が開く。
周りの人間は何も見えない。
何故か、三柱がその部屋に入ると、
真っ暗になって、三柱が机と椅子に座っているのだが、
そこにスポットライトが当たっているような感じになる。
スサノオは、地上にいたら、突然天上から縄のようなものが下がって来て、
あっという間に自分をぐるぐる巻きにしたかと思ったら、
天上に持ち上げられていった事を思い出した。
「姉上と兄上の怪力と言ったら・・・」
アマテラスとツクヨミは天津神、つまり高天原の神で
スサノオは葦原中国、つまり地上の、、国津神なのである。
アマテラスの太陽の神殿で三貴神の一柱として話し合うには、
国津神であるスサノオを、天上に連れてこないといけない。
様々な方法があるようなのだが、
てっとり早く、「縄」で引っ張り上げればいい、と姉と兄は思ったのだ。
しばし美しくアマテラスとツクヨミがその様がおかしくて笑った。
「笑うな!」スサノオが言った。
・・・恵比寿兄上が来たか。
俺は末っ子だけど、逆なんだな、あの人
あの人、、という言葉に反応するアマテラス。
「ヒコ、という名前を賜ったのは、、
一部に使うのでしょうけど、めでたい事ですね」
ツクヨミが穏やかに言った。
三柱で、葦原中国の何の物質を使うのか、色々と話し合った。
葦原中国は精神が美しい国である。
国土ももちろん美しいが。
物質にこだわっても・・・
悩むアマテラス。
少し古い、素朴な作りの笛を出してツクヨミがとても真剣な顔で言った。
「この笛はただの『物質』です。
でも、魂がこもっている、と―
精神があります。
「物質」にも「精神」は宿ります―・・・」
部屋が少し、、というか扉が開いてるんじゃないか?と錯覚するくらい明るい。
扉というか、この部屋に入ってくる時に開く壁の部分だが。
スサノオが切なそうに、優しそうに言った。
「クシナダヒメと一緒に、、そしてスセリヒメと・・・
一緒に住んでいた・・・家。
あれも魂っていうか。
生きてる、、と思う」
葦原中国の精神が入っている「物質」
何処にあるんだろう。
アマテラスは思いを馳せた。