フクロウの話を聞く人はいつもここで手を挙げ、
「それの何処が良い話なんです?」とか
「っていうか、その兄弟って、、その父親って・・・」
とざわざわ騒ぎ、真っ青になり、がくがく震えた。
フクロウは言う。
「悪いことも含めて、それを反省しつつ
全部正面から向き合い、今後に生かす―
国を愛するというのは、美談ばかりを取り上げるものではない。
かと言え、恥部を暴露するのは故人に対する冒涜になる可能性がある。
・・・君たちはどう考える」
しーん、とした静寂。
フクロウ用に、今で言う教卓のようなものが作られ、その上に乗っているフクロウだ。
先程までは小屋の中で聞いていたのに、
いつの間にか青空教室になっているフクロウ塾。
凛とした少年が言った。
「兄とは・・・」
フクロウは壁を作った。
「オオキミ(天皇)とは言え、そんな、尊敬出来ません。
ここの国の人間であることを心の底から恥に思います!」
大声で訴えた。
周りの人間たちはおろおろして、誰も声を掛けられる者はいなかった。
歴史とは、真実とは決して優しいもの、美しいものばかりではない。
続きは明日、となって解散になっている頃、空も話を聞いてぐったりしたのか、
暗くなっていた。
さっきまで普通に明るく、夕方にすらなっていなかったのに。
学者帽のようなものを頭に乗せ、目を眠そうにしているフクロウに対し、
「老師!」と呼び止めてさきほどの凛とした少年が言った。
「あの・・・老師はそんなことを語って何がしたいのですか?
憎しみを愛情にとか・・・赦しに転換せよと?
それではあまりに・・・」
フクロウは丁度住み処に帰ろうとしていたのだが、
くるりと、やはり眠そうな顔で振り返った。
周りではカエルがゲコゲコ、遠慮深く鳴く声が聞こえる。
救いが欲しいなぁ、と言っているようであった。
話を聞いていた人々が全員いなくなった後、フクロウは言った。
「国の悪い所も全部を受け入れるのが、国民の務めだ」
でも、教える存在が悪い場合もある。
鵜呑みにせずに自身で調べる必要もある。
・・・
その頃の「書物」に該当するものは、草を煮たものを、紙のように作ったものだった。
筆は身分のある人間のみが使うもので、
普通の一般人は、黒っぽい粘土を指に擦り込み、指紋で文字を書いた。
文字と言っても神々が使う神代文字ではない。
絵を崩して作った「絵崩し文字」とでも言うべきか。
例:
(家に帰る)
↓
(崩されて...)
↓
少年は、タケルと言った。
タケルは母親が少し心配するほど、家にある日本の伝承本を読み漁った。
フクロウとの思い出を思い出す。
フクロウ『とにかくね、歴史っていうものは大切なんだよ。
伝えるのもいいけど、ブツに残しておかないと』
タケル『老師、いつもそれだねー聞き飽きたよ』
パタパタと羽を揺らしながら、強く言うフクロウ。
『歴史書は、あー歴史書ってのは大袈裟だね。
昔の歴史とか記録がある書物は、、例え燃やされても、事故で失っても
また・・・』
目を細めて、そのやりとりを思い出す。
「とにかく残しておけ、残しておけ、聞き飽きたし。
歴史なんて変わるし」
などと独り言を言ったが、
今日聞いた例のやばい歴史のことを思い出した。
バサバサッと、草紙?(名称不明)をめくり、一生懸命該当文章を探すタケル。