第6話:アマテラスとスサノオ
ふと、スサノオは考えた。
確か、男神と女神の交合で、神様を作ることが出来る、ということを知っている。
それが出来たら、一人前だと認めてもらえるのではないか?と。
この頃は、結婚だの愛だの、生命だとかを作るのに倫理や道徳観はだいぶ緩かった。
ふと、父親と母親の愛の何かが―、抱き合ってるような画像が見えた。
とても悲しくて、遠い想い出の日に戻されてしまったような悲しい感覚。
じわっと涙が出て、
その愛らしい機織女に「失礼しました」と謝り、
そして出て行った。
少しして、
機織り場を開ける戸の、別の戸からたくさんの機織女やら神様たちが出て来た。
「うっ、何なの、この獣臭さはっ」
場は騒然となった。
「何なの?この血は!」
スサノオの服から落ちた、鹿や猪の血である。
ここで何が起こった?!
ということになり、残っていた機織女が色々聞かれた。
機織女は必死にスサノオを庇ったが、
みな、可哀想に、と慰め、避難させた。
アマテラス「あなたは何もしていないということは分かっています。
ですがもう、これ以上あなたを庇えません」
スサノオはうなだれた。
本当に彼は、乱暴狼藉をしているつもりはなかった。
ただ、精神:肉体、の配分が9:8であるあまり、8の力が強大すぎて
すぐに物が壊れてしまうのである。
ちなみにスサノオの精神「9」については毘沙門天と同じで、
悪を打ち負かすことで、善を守る、という概念。
スサノオ「ひとつだけ、頑張ったことがあります」
そう言って、スサノオはくるりと後ろを向いた。
「きりちゃん、しまちゃん、たぎつちゃん」
すると・・・
三柱の、美しい女神が現れた。
スサノオは向き直って、自分の前に三姉妹を並べ、
「姉上の勾玉を・・・あの桃色の勾玉を砕いて、自分だけの力で神を作りました」
と言った。
「なんて・・・」
アマテラスは感動した。
彼は自分の剣を取り出し、
「もう暴力は捨てます。武力は捨てます。この剣を姉上に預けます」
と、アマテラスに剣を渡した。
そして自慢の娘たちをアマテラスに預け、
「さようなら」とスサノオは去って行った。
アマテラスはスサノオの剣を見た。
「こういう剣があるのは危険だから、処分した方がいいですね」
そして三姉妹を見て、ムッと闘争心が湧き、
私も立派な神を、と、バリバリバリッ!と剣を砕き、プーッ!吹いた。
五柱の男神が生まれた。
盛夏のような三姉妹と、
初夏の香りのする五兄弟。
そういえば・・・
「(スサノオが、母親のことで吹っ切れたような顔をしているのが、
不思議だった。けど良かった・・・)」
と安心するアマテラス。
第3章:神々の物語「第6話:アマテラスとスサノオ」
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